今みたいに新幹線ですぐ戻ってくるなんてできなかったですから。 新田 「写真」のように演奏された音をそのまま録音するのではなく、強調したい音を「絵画」のように自由に描く手法を意識しました。 眠っている君をポケットに入れて持ち去りたい。
3。
'71年発売の上條恒彦+六文銭の『出発の歌』や、'72年には、はしだのりひことクライマックスの『花嫁』が大ヒットした。
夢や希望でいっぱいだけど、捨てるものもある。
段取りが悪かっただけです。
雨の日はバスで通勤することがある。 でも訴える熱いものがある。
雨のバス停で待つ。
何人か同士がいるが、ここは大都会東京である、コミュニケーションなぞとるはずもなく、それぞれにスマホを見つめる。
自らを納得させるように、愛が終わって、また心の旅が始まるのだと結ぶ。
この雨は労使会議を前に礫のごとく課題を浴びせられている僕の心中を表しているのかなんなのか。 旅をしても、帰ってくるのは雨の大田区である。 Photo by gettyimages 伊藤 僕ら世代には、特に「明日の今頃は僕は汽車の中」というフレーズが響く。
9なるほどと思った私は、財津くんと相談をして急遽構成を変えて録音することにしました。 突然「だから君を抱いていたい」と言われても、因果とは?因果はどうなった?と混乱してしまう。
あーだから今夜だけは 君を抱いていたい あー明日の今頃は 僕は汽車の中 チューリップ、財津和夫のメロディセンス炸裂である。
その複雑な感情がうまく表されている曲だと思います。
自費だが、15分土砂降りの中歩くのを考えると乗っちゃった方が…と思う。
一体、そんな叙情的な心の旅はいつできるのだろうか。 当時、若者が上京する時は夜汽車と決まっていたものです。
社会常識となりつつある「結論から述べよ」を体現し、理由も申し分ない。
小田和正くんも早い時期から財津くんとチューリップに注目し、評価してくれていました。
旅立ちを前に、別れなければいけない苦しさを訥々と述べる主人公。
だから僕は雨の日、なんとはなしに曲を口ずさむ。 僕らレコーディングスタッフは、その単純な曲の魅力を最大限引き出す努力をしました。 そりゃあ抱いていなよ、抱いてたほうがいいよ、と、心底思ってしまう。
13改めて歌詞を調べてみると、いわゆるAメロの部分で状況説明がされていた。
絶対に誰にも聞こえない、雨音より小さな声で。
ビートルズの『イエスタデイ』の最後でポール・マッカートニーが「愛とはゲームのようなものだ」と歌っています。
雨の大田区に帰着するとわかってしまうから、別に君を抱く理由にもならず、何をする理由にもならない。
業務レポートにでも使えるんじゃないか。
「だから、今夜だけは、君を抱いていたい」 なんと単純かつ強力な論法だろうか。
なんと酷い。
こんな親しみやすいメロディはなかなか作れたものじゃない。
たまたま口をついて出てきたのが、心の旅であった。