築地の上の草あをやかなるも、人はことに目もとどめぬを、あはれとながむるほどに、近き透垣のもとに人のけはひすれば、誰ならむと思ふほどに、さし出でたるを見れば、故宮にさぶらひし小舎人童なりけり。 それを、 本意 には あら で、 心ざし深かり ける人、行き とぶらひ けるを、 本意(ほい)=名詞、本来の意志、かねてからの願い。
16に: 格助詞: のがる 目次 品詞分解1 花の咲き散る折ごとに、乳母なくなりし折ぞかし 品詞分解2 五月ばかり、夜ふくるまで物語を読みて2. )わが身だけは(去年の)もとの身のままで。 かかる歩きのつねにうひうひしうおぼゆるに、さりとて参らぬはおぼつかなければ、はかなき世の中に苦し」とのたまはすれば、「ともかくものたまはせむままにと思ひたまふるに、『見ても嘆く』と言ふころにこそ思ひたまへわづらひぬれ」と聞ゆれば、「よし、見給へ。
つまり、 イケメンで自由気ままに生き、女性を口説く和歌に優れていた人でした。
日ごろのおぼつかなさなど言ひて、「あやしきことなれど、日ごろもの言ひつる人なむ遠く行くなるを、あはれと言ひつべからむことなむ一つ言はむと思ふに、それよりのたまふことのみなむ、さはおぼゆるを、一つのたまへ」とあり。
深かり =ク活用の形容詞「深し」の連用形 ける =過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形 人 =名詞 行き =カ行四段動詞「行く」の連用形 とぶらひ =ラ行四段動詞「訪ふ(とぶらふ)」の連用形、見舞う、訪れる。
とくいそぎ立ちたらましかばと思ふ。
ラ変動詞では 連体形に付く。
それでもやはり。
おはしまして、帰らせ給ひぬ。
雨うち降りて、いとつれづれなる日ごろ、女は雲間なきながめに、世の中をいかになりぬるならむとつきせずながめて、すきごとする人々はあまたあれど、ただ今はともかくも思はぬを、世の人はさまざまに言ふめれど、身のあればこそ、と思ひてすぐす。
7(男は高子の)居場所(=宮中だということ)を聞くけれど、人の行けなさそうなところなので、やはり、つらいと思って過ごしていた。
と詠んで、夜がほんのりと明ける頃に、(男は)泣きながら帰ったのだった。
「なほ人の言ふことのあれば、よもとは思ひながら聞えしに、かかること言はれじとおぼさば、いざたまへかし」などのたまはせて、明けぬれば出でさせ給ひぬ。
係り結び。
「忘れじ」と言ひつるを、をかしとおぼして、 夢ばかり涙にぬると見つらめど臥しぞわづらふ手枕の袖 ひと夜の空の気色の、あはれに見えしかば、心がらにや、それよりのち心苦しとおぼされて、しばしばおはしまして、ありさまなど御覧じもて行くに、世に馴れたる人にはあらず、ただいとものはかなげに見ゆるも、いと心苦しくおぼされて、あはれに語らはせ給ふに、「いとかくつれづれにながめ給ふらむを、思ひおきたることなけれど、ただおはせかし。
おそろしとにはあらねど、むつかしければ、「今、かの北の方にわたしたてまつらむ。
宮より、御文あり。
【更級日記(上)】 更級日記について 作者は菅原孝標(すがわらのたかすえ)の女(むすめ)。
咲か- ず 恋ひ- ず 燃え- ず 見-られ- ず 行か-しめ- ず 知ら- に せ- ね-ども• 時雨かもなにに濡れたる袂ぞと定めかねてぞわれもながむる とて、「まことや、 もみぢ葉は夜半の時雨にあらじかしきのふ山べを見たらましかば」 とあるを、御覧じて、 そよやそよなどて山べを見ざりけむけさは悔ゆれどなにのかひなし とて、端に、 あらじとは思ふものからもみぢ葉の散りや残れるいざ行きて見む とのたまはせたれば、 「うつろはぬ常磐の山も紅葉せばいざかし行きて問ふ問ふも見む 不覚なることにぞ侍らむかし」 ひと日、おはしましたりしに、「さはることありて聞えさせぬぞ」と申ししをおぼし出でて、 高瀬舟はやこぎ出でよさはることさしかへりにし蘆間分けたり と聞えたるを、「おぼし忘れたるにや、 山べにも車に乗りて行くべきに高瀬の舟はいかがよすべき」 とあれば、 もみぢ葉の見に来るまでも散らざらば高瀬の舟のなにかこがれむ とて。
ずき 連用形「ず」+過去の助動詞「き」。
あからさまにも参りて、宮たちをも見たてまつり、心もなぐさめ侍らむと思ひたまふる。
色々に見えし木の葉も残りなく、空も明かう晴れたるに、やうやう入りはつる日影の、心細く見ゆれば、例の、聞ゆ。
シク活用形容詞「をかし」終止形 草葉 名詞 も 係助詞 水 名詞 も 係助詞 いと 副詞 あをく ク活用形容詞「あをし」連用形 見えわたり ラ行四段活用動詞「見えわたる」連用形 たる 完了の助動詞「たり」連体形 に 接続助詞 上 名詞 は 係助詞 つれなく ク活用形容詞「つれなし」連用形 て 接続助詞 草 名詞 生ひ茂り ラ行四段活用動詞「生ひしげる」連用形 たる 完了の助動詞「たり」連体形 を 格助詞 ながながと 副詞 ただざまに 副詞 行け カ行四段活用動詞「行く」已然形 ば 接続助詞 下はえなら ざりける水の、深くはあら ねど、 人などの歩むにはしりあがり たる、いとをかし。 など、かくなむとものたまはせざりけむ。 心憂き身なれば、宿世にまかせてあらむと思ふにも、この宮仕へ本意にもあらず、巌の中こそ住ままほしけれ、また憂きこともあらば、いかがせむ、いと心ならぬさまにこそ思ひ言はめ、なほかくてやすぎなまし、近くて親はらからの御ありさまも見きこえ、また昔のやうにも見ゆる人の上をも見さだめむ、と思ひ立ちにたれば、あいなし、参らむほどまでだに、便なきこといかで聞しめされじ、近くては、さりとも御覧じてむ、と思ひて、すきごとせし人々の文をも、「なし」など言はせてさらに返りごともせず。
和泉式部日記 (新字、歴史仮名遣いによる) 夢よりもはかなき世の中を、嘆きわびつつ明かし暮すほどに、四月十余日にもなりぬれば、木の下暗がりもてゆく。
「見れ」は已然形。
頼もしき人もなきなめりかしと心苦しくおぼして、「今の間いかが」とのたまはせたれば、御返し、 けさの間に今は消ぬらむ夢ばかりぬると見えつる手枕の袖 と聞えたり。
あはれにおぼされて、女寝たるやうにて思ひ乱れて臥したるを、おしおどろかさせ給ひて、 時雨にも露にもあてで寝たる夜をあやしくぬるる手枕の袖 とのたまへど、よろづにもののみわりなくおぼえて、御いらへすべき心地もせねば、ものも聞えで。
むつかしき所などかきはらはせなどせさせ給ひて、「しばしかしこにあらむ。 更級日記『物語・源氏の五十余巻』 ここでは、更級日記の中の一節『物語』の「かくのみ思ひくんじたるを〜」から始まる部分の現代語訳・口語訳とその解説をおこなっています。 ただ月を見てぞ、西東をば知りける。
6公開日:平成19年3月15日 最終更新日:平成21年11月19日 |||. いとほしく」と、のたまはすれば、「いかに侍るにか、心地のかき乱る心地のみして、耳にはとまらぬにしも侍らず。
思ひきや七夕つ女に身をなして天の河原をながむべしとは とあり。
あはれにもののおぼさるるままに、おろかに過ぎにし方さへくやしうおぼさるるも、あながちなり。
品詞分解 左右 名詞 に 格助詞 ある ラ行変格活用動詞「あり」連体形 垣 名詞 に 格助詞 ある ラ行変格活用動詞「あり」連体形 もの 名詞 の 格助詞 枝 名詞 など 副助詞 の 格助詞 車 名詞 の 格助詞 屋形 名詞 など 副助詞 に 格助詞 さし入る ラ行四段活用動詞「さし入る」連体形 を 格助詞 いそぎ ガ行四段活用動詞「いそぐ」連用形 て 接続助詞 とらへ ハ行下二段活用動詞「とらふ」連用形 て 接続助詞 折ら ラ行四段活用動詞「折る」未然形 ん 意志の助動詞「む」終止形 と 格助詞 する サ行変格活用動詞「す」連体形 ほど 名詞 に 格助詞 ふと 副詞 過ぎ ガ行上二段活用動詞「過ぐ」連用形 て 接続助詞 はづれ ラ行下二段活用動詞「はづる」連用形 たる 完了の助動詞「たり」連体形 こそ 係助詞(係り結び) いと 副詞 くちをしけれ。
「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。 いかに、まして、おぼつかなからむ」とあれば、 「をりすぎてさてもこそやめさみだれてこよひあやめの根をやかけまし とこそ思ひ給うべかりぬべけれ」と聞えて、参りて三日ばかりありて返りたれば、宮より、「いとおぼつかなくなりにければ、参りてと思ひたまふるを、いと心憂かりしにこそ、もの憂く、恥かしうおぼえて、いとおろかなるにこそなりぬべけれど、日ごろは、 すぐすをも忘れやするとほどふればいと恋しさに今日はまけなむ あさからぬ心のほどを、さりとも」とある、御返り、 まくるとも見えぬものから玉かづら問ふ一すぢも絶えまがちにて と聞えたり。
「ふるめかしう奥まりたる身なれば、かかるところにゐ慣らはぬを、いとはしたなき心地するに、そのおはするところにすゑ給へ。 活用する古語の場合、その古語の「 活用形」および「 活用の種類」が分かります• 憂し=ク活用の形容詞「憂し(うし)」の終止形、いやだ、にくい、気に食わない、つらい。
品詞分解 … 古語が、複数の品詞から成る場合に、品詞を分解して示す• 宮より、「雨のつれづれは、いかに」とて、 おほかたにさみだるるとや思ふらむ君恋ひわたる今日のながめを とあれば、折を過ぐし給はぬを、をかしと思ふ。
係り結び。
愛情、誠意。