しかし、辺りには誰もおらず、鉄の扉で会場は閉まっていた。
「猿」は恋した女性の名前を盗んで生きているという。 見れば見るほどそれは私自身ではなく、見覚えのないよその誰かのように思えてきた。
冒頭からいきなり強烈な表現が出てきて面食らいました。
スーツをほとんど着ない「私」が、違和感を抱えながら突然スーツで街を歩き始める。
三年前に、どこかの水辺であったことを。
不穏なラストシーン 最後は「私」がに迷い込むところで終わりを迎える。 私のこれまでの人生には - たいていの人の人生がおそらくそうであるようにーいくつかの大事な分岐点があった。 その点が面白い。
8そうした「私(僕、ぼく)」が実に多様な状況設定のもと、自在に描かれているのである。 「私」が外に出てみると、の様になっていた。
この作品はそんな内容を扱います。
「というよりは、まあ、いろんな仮定法みたいなもの、こうであったかもしれない『私』みたいな感じですよね。
これはが年をとったからなのかなとちょっと思っている。
ドーパミンに駆動されて女性の名前を盗んで我が物にするという猿。 刊行を受けて、特に上記の表題作を読んでみると、いっそう含蓄に富む話と感じられる。 例えば、「石のまくらに」の「僕」は、女性の「無防備で柔らかな肉体」は覚えているくせに、名前や顔はろくに覚えちゃいない。
20主人公と色々な話をする中で、猿が「ある告白」を…。 奥さんは彼女が醜いので余裕だったそう。
0 村上春樹の『 一人称単数』です。
ある日彼女の家を訪ねたが、そこには彼女の兄しかおらず、彼と会話することになる。
仕方なく来た道を戻るが、途中、体調が悪くなり公園で休憩をとる。
初期作品で一人称の「僕」を用いた新しい文体が多くの読者をとらえた村上文学は、その後、徐々に三人称による小説へと移行してきた。 『午後の最後の芝生』のような瑞々しさはちょっと、ないけど。 そういった謎や問いかけ過多な書き方に加えて、現実世界の歴史的事実との微妙な差異や、先行作品・作家(ないし思想)を思わせる要素の存在がばらまかれていることが、「現実と小説の中の記述を比べれば/先行作品・作家と村上春樹を比べれば、謎が解けるのでは?」という誘惑をさらに促す。
5発売日に書店で見かけたときには恥ずかしくて手に取ることもできなかったけれど、そろそろいいですよね(笑) あらすじ 「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。 たとえば出会った女性とカジュアルに(インスタントに?)性行為に及ぶ主人公の男性。
興味深いのは、本短編集では、そんな女性蔑視の構造が自己批判されていることだ。
筆者は この作品を本当にイチオシします。
自分に何が似合うか、サイズ感とか。
ヤクルトの優勝と村上春樹の作家デビューはもちろん「ただの偶然の一致」に過ぎませんが、 村上春樹という作家は周囲が考えている以上に、ヤクルト・スワローズとの不思議な縁を大切にしているかもしれないと思いました。 独特な比喩表現と、 淡々とした起伏のない 主人公の語り口が、 まさに村上春樹作品だと 感じました。
「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。
最後に読んだ著者の作品は、 騎士団長殺し。
東京の大学で好きな子ができたという、よくある理由です。
文章に余白があって、 初期の村上作品を連想させ、かなり面白い構成になっております。
読書感想こらむ 本を開いて最初の作品「石のまくらに」を読み始めた瞬間に、「あれ? なんだか前に読んだことがあるぞ」と思ったら、「文学界」掲載時に読んだ作品でした。
ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles 「僕」が今でもよく覚えているという、一人の女の子。
そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。
『 海流の中の島 夏のその午後 甲子園球場の左翼席で ヤクルト・スワローズの応援席を探した 探し当てるまでに 時間がかかった。
「あなたのその親しいお友だちは、というかかつて親しかったお友だちは、今ではあなたのことをとても不愉快に思っているし、私も彼女と同じくらいあなたのことを不愉快に思っている。 1964年とか1965年。 そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。
20「一人称単数」で描かれているのは自分の人生に対する違和感だ。 (「ヤクルト・スワローズ詩集」) 今回の短編小説集を読み終えて一番おもしろかった作品は「『ヤクルト・スワローズ詩集』」です。
「自分の経歴を粉飾して生きている人が感じうるであろう罪悪感」に似た様な違和感を覚えたのである。
寂れた宿であったが、温泉は思いのほか素晴らしいかった。
「そんなことしていて、何か愉しい?」 「私」のことを不愉快に思うという彼女は、理不尽に「私」の全てを罵倒してくる。
申し訳ないけど、数人の女性の顔が頭をよぎった。
わかりやすいのが軍隊です。 会社員経験がない村上春樹にとってはしっくりとくる表現だ。
6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集 「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。
「一人称単数」刊行時は71歳だった。
この短編小説は「ある意味で」村上春樹という小説家にとって、 代表作のひとつになり得る力を持っている作品だと思いました。