葬儀 コロナ。 最期の別れに親戚も呼べないなんて…新型コロナで葬儀縮小、会食中止 棺不足も

最期の別れに親戚も呼べないなんて…新型コロナで葬儀縮小、会食中止 棺不足も

葬儀 コロナ

新型コロナウイルスが猛威をふるう中、葬儀社の動向にも注目が集まっています。 3月16日には鎌倉新書でも新型コロナウイルスに対して、葬儀社がどのような対応をしているか、また一般の方々がどのような対応を葬儀社に対して望んでいるか、を発表しました。 しかし、現在、状況はさらに深刻さを増し、感染拡大を受けて政府は 4月7日、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に、5月6日までの期間で緊急事態宣言を発令しました。 このような状況の中、葬儀の現場ではどのような対応が取られているのでしょうか? 今回は、首都圏並びに地方の葬儀社の皆さんに新型コロナウイルスへの対策について、お電話でお話を伺いました。 喪主も葬儀社のスタッフもマスクで葬儀 東京都江戸川区に本社を構える株式会社東京葬祭の取締役、尾上正幸さんは「新型コロナウイルスに対する消費者の不安は2月末の段階ですでに現れていた」と言います。 2月の末には、「万一、迷惑がかかると申し訳ないので、遠方の親せきをご葬儀に呼ばない」という喪主が。 そして3月に入ると会食を行わなかったり、人数を限定したお葬式を希望する遺族が増えたそうです。 そして現在、同社の葬儀は喪主も参列者も全員マスクを用意し、着用して列席。 施行担当者もマスクを着用して葬儀を執り行っています。 葬儀前の打ち合わせは対面で行っていますが、打ち合わせ中も担当者はマスクを必ず着用し、また各自に消毒用アルコールを常に携帯させ、打ち合わせの前に必ず手の消毒することを義務付けています。 会社としては、全社員にマスクとマスクの中に入れる不織布を配布しています。 「インフルエンザやノロウイルスが流行ることを見越して、マスクや消毒液はあらかじめストックできていましたので、葬儀のスタッフだけでなく、生花店や飲食業者など協力業者の方にも同様に配布を行っています。 一時不足も懸念されていましたが、地域の方々やお取引先様の情報に支えられながら、対策を続けています」(尾上さん)。 葬儀の前には式場のドアノブの消毒と換気を徹底 葬儀社としての対応については、まず葬儀会館の清掃があると言います。 「定期的な会館の清掃に加え、ご葬儀の会式前には必ずドアノブなど手を触れる場所を消毒し、さらに葬儀が始まる前に『換気のために』とアナウンスし、窓や扉をすべて開けさせていただき、空気の入れ替えを徹底しています 」 (尾上さん)。 また、医療関係者との連携して、もしも新型コロナウイルスに感染した方の葬儀を担当した場合、どのような対応をしなければならないかといったレクチャーを受け、それを基準に基本的なルールを策定しました。 そのルールや対応方法などを説明する動画も作成し、社内で共有しています。 写真はイメージです。 注目される大型の葬儀式場 また、使用される会館の傾向にも変化が訪れています。 近年、家族葬など小規模な葬儀が増える中、大型の会館はどちらかというと敬遠されてきました。 大きな会場に親族のみ数名の参列者というと寂しい印象を与えかねず、家族葬専用ホールというように小型の斎場が選ばれていました。 ところが、新型コロナウイルスの影響で大型の会館も見直されているようです。 少人数であってもあえて大型の葬儀式場を選んで、参列者同士の間隔を開けて椅子を用意し、広々とした空間を使って感染のリスクを軽減させる葬儀を希望する喪主も増えているようです。 密閉・密集・密接。 3つの密を回避するため葬儀式場のレイアウトにも工夫 こうした動きは東京葬祭に限ったことではありません。 「従来、大型の式場は家族葬など小規模な葬儀に対応するためカーテンなどで区切って利用していました。 しかし今では、広い空間で1メートル以上の間隔を空けたレイアウトを用意して、ご遺族に提案しています」というのは、東京近県の葬儀社に勤めるAさんです。 Aさんの葬儀社のある地域では、3月に入ったころはまだ遺族も「新型コロナウイルスを意識して小規模な葬儀を望む方もいれば、あまり意識をされない方もいらした」と言います。 換気などに注意を払うスタッフを見て「そこまで配慮するのね」と驚く方もいたそうです。 しかし、3月下旬になると、葬儀の規模を小さくしたいという希望はより多くなりました。 4月に予定されていた四十九日法要は家族だけで行うことにして、「親族は一周忌に集まりましょう」という遺族もいらっしゃるそうです。 Aさんはこうした遺族の要望の変化に先だち、新型コロナウイルス感染の不安を少しでも払拭できるよう、通常の葬儀の案内資料とは別に、新たな資料も用意しました。 3つの密を回避できるよう、葬儀式場のレイアウトなどに工夫を凝らすほか、さまざまな提案を準備しています。 感染リスクを減らすため、持ち帰りできる通夜振る舞いや時間差での参列を提案 例えば高齢の方がほかの参列者との接触を極力避けられるようにと、お通夜の前後で時間をずらした参列を勧めるなど、感染リスクを抑える提案をしています。 また、通夜振る舞いなどの料理は持ち帰ることができるように手配。 「焼香に来ていただいただけで十分気持ちは伝わります。 まずは感染しない、させないことを最優先」としています。 さらに今後は感染リスクをより減らすため、「焼香の列も間隔を空けるようにしたい」と語っています。 写真はイメージです。 感染リスクのある通夜や参列を抑える直葬・火葬式や一日葬が増加 「新型コロナウイルスにおける実態調査」/鎌倉新書/2020年4月/n-92 鎌倉新書が「いい葬儀」の提携葬儀社を対象に行ったアンケートでは、新型コロナウイルスによって増加した葬儀の形態に、直葬・火葬式や一日葬など、通夜や告別式での感染リスクを抑えるため、参列者数の少ない葬儀や時間が短い葬儀の依頼や相談が増えているという結果になりました。 また、家族葬も参列者数が10名以下というように、規模を縮小してお葬式を執り行うという依頼や相談も増加しています。 新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策は葬儀社により異なる 新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策として、感染拡大予防の取り組みは各社ともに行っていますが、感染の疑いのある故人の葬儀については、ます。 「新型コロナウイルスにおける実態調査」/鎌倉新書/2020年4月/n-92 現段階で、感染の疑いのある故人の葬儀も「対応している」という葬儀社は全体の34. (感染が疑われる故人については)防護服やフェイスガード、ゴーグルを着用して対応し、搬送車も都度専門業者によって消毒するというところもある一方で、防護服の準備が間に合っていない(ため対応しない)といった回答もあります。 葬儀の模様を撮影する遺族が増えている それでは、地方の葬儀社ではどのような対応を取っているのでしょうか? 秋田県大仙市にある花王堂大曲葬儀社の遠藤元也社長は、参列者に向けて式場の前に「マスクを着用して参列してください」という看板を用意しました。 そして入り口にはアルコール消毒を用意して、各自で消毒をしてから参列してもらうようにしているそうです。 さらに、式後には会場を封鎖して、空気を除菌する装置を用いて清浄化に努めています。 葬儀の傾向としては、「参列者数の減少はある」と言います。 遺族たちの中には「東京をはじめ首都圏で暮らす親族には、葬儀への参列を遠慮してもらうよう」連絡をしている方も多く、そうした影響は少なからず現れています。 同時に、葬儀に参列できない親族に送るため、葬儀の模様をスマホで撮影したり、動画を撮る遺族が増えているそうです。 さらに、遠藤社長は先日、地域の公営火葬場に対して、「万一、新型コロナウイルスに感染した方が亡くなった場合の火葬のルールを決める必要がある」と提案を行いました。 「現在、この地域では一日に6回火葬を行っており、一番最終の時間帯が14時から16時です。 ですので、もしも感染者の火葬を行う場合には、故人やご遺族のプライバシーを守るためにもすべての火葬が終わったのち、17時からとするなどの提案をさせていただきました」(遠藤さん) 今回の提案には、2011年の東日本大震災の教訓もあると言います。 「行政は、生きている人の対策は考えていますが、亡くなった方のことはどうしても後回しにされがち。 今の段階からルールを決めておかないと、もしもの時、現場もご遺族も混乱する恐れがあります」。 そうした混乱を避けるためにも、早い段階でルールの制定を求めたいというわけです。 写真はイメージです。 透明な納体袋での葬儀は現実的か? さて、先日、新型コロナウイルスに感染者が亡くなった際に、納体袋に入ったままでも遺族たちが顔を見てお別れができるようにと、透明な納体袋が提案され話題になりました。 しかし、納体袋での葬儀には、葬儀社の中でも賛否両論あります。 先述の尾上さんは「故人のお姿を見てお別れすることが必ずしも良いことではない場合もあるのでは?」と懸念しています。 「2次感染を防ぐため、通常のエンゼルケアや死化粧が行われていないご遺体と遺族が対面した時、どのようなお気持ちになるかわかりません。 いろいろできることは素晴らしいとは思いますが、それが必要か?と問われると、違うのではないかと思います」(尾上さん) このほか「棺に横たわる故人様の姿というと、どなたも安らかな表情でいらっしゃるというイメージがあるのでしょうが、現実はそうとは限りません」という意見もあります。 人工呼吸器を使用することで、遺体の口が開いている可能性もあります。 感染のリスクもある中、医療関係者もどこまで遺体の処置ができるかはわかりません。 万が一、苦悶の表情のままの故人の姿を見た時、遺族はその姿を忘れることはできないでしょう。 また、納体袋そのものも、かなりしっかりした作りになっているため、余分な部分を下側に折り込んだりといったことが、簡単にできるものではないようです。 棺に納めた際に、遺族と対面ができるようなきれいな見栄えを保つことは「熟練の葬儀担当者であっても難しい」といった指摘もあります。 葬儀の現場にいる方からは、「最期の姿が悲惨であれば、その方の人生もすべて否定的に受け取られてしまう可能性もないとは言えません。 故人の尊厳を守るためにも、透明な納体袋でのお別れを手放しで賛同することは危険ではないでしょうか」という意見もありました。 さらに、もうひとつ考えなければならないのは、どなたかが新型コロナウイルスで亡くなった場合、その遺族も感染している可能性があるということです。 納体袋に納めることで遺体からの感染のリスクが回避できたとしても、もしも遺族から感染が広がってしまったら本末転倒です。 「故人のために何かをして差し上げたいという気持ちはわかりますが、次の感染者を出さないことこそが、故人の願いなのではないでしょうか」 このような状況に対し、先述の遠藤社長は感染者の葬儀を対応する場合を想定して、防護服を数セット用意しました。 「社員のためだけでなく、ご遺族にも使っていただけるようにと用意しました。 もちろん使わないに越したことはありませんが……」。 もしもの時、遺族が「どうしても」と希望するのであれば、故人と対面できる機会は用意したいと語っています。 まとめ 今回は首都圏と地方、いくつかの葬儀社にお話を伺いました。 共通することは、まず、感染のリスクを抑えて葬儀を行うには何ができるかということについて、いずれの葬儀社も真剣に取り組んでいる様子です。 そして、今後、もしも感染者の葬儀を行うことになった場合、どうすれば遺族にとって一番望ましいお別れができるのかということについても、さまざまな場面を想定して検討を進めています。 もう一つ、今回の取材で印象的だったのが、心ならずも葬儀の規模を縮小した遺族から、新型コロナウイルスが収束したら「お別れ会」を開きたいという希望もいくつか寄せられているという点です。 例えば、今は葬儀を身内だけで小人数で行い、「5月に改めてお別れ会を開きたい」という具合です。 状況を鑑み、5月の開催が難しい場合はさらに延期することも視野に入れながら、「将来のお別れ会」という希望にも柔軟に対応できるよう、取り組んでいるようです。 こうした機会がきっかけに、新たな葬儀のかたちが生まれるかも知れません。

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葬儀で新型コロナウイルス集団感染…最後を看取れない可能性も…

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(写真:PIXTA) 人と人との隔たり(ソーシャル・ディスタンス)を広げる新型コロナウイルス。 新型コロナウイルス感染症で亡くなった後、故人をしのぶ最期の別れの場でも、故人と遺族との間に「ディスタンス(距離)」が求められ、遺族らの悲しみに追い打ちをかけている。 厚労省は、新型コロナウイルス感染症の患者が亡くなった場合の、遺体からの感染リスクについて注意を促している。 通常、人が亡くなった場合は「墓地、埋葬等に関する法律」によって、死後24時間以内の埋葬や火葬が禁じられているが、新型コロナウイルス感染症で亡くなった場合は、感染症法などに基づいて24時間以内に火葬することができる。 「できる」だけで強制ではないものの、むしろ「感染拡大を防ぐために通常よりも速やかに行うことが求められている」(大手葬儀会社)。 遺体は全体を覆う非透過性の納体袋に収容して密封し、遺族が遺体に触れる際は手袋の着用を求めている。 首都圏や関西に拠点がある燦ホールディングス(HD)傘下の公益社では、葬儀の申し込みがあった段階で遺族や医療機関に亡くなった人の死因を確認。 新型コロナウイルスへの感染が判明すれば、医療機関に遺体を納体袋に入れてもらい、棺に目張りをするなどして納棺。 そのまま火葬場に移送して荼毘(だび)に付す。 遺族が棺を運ぶことなどは可能だが、納棺後は亡くなった人の顔を見ることはできなくなる。 東海地方を中心に葬儀会館を展開するティアも「遺族の了承を得て、医療機関から直接火葬場に向かい、その後に骨葬を行わせていただく」。 厚労省ホームページには「感染拡大防止対策上の支障等がない場合には、通常の葬儀の実施など、できる限り遺族の意向等を尊重した取扱をする必要があります」との表記はあるものの、従来のように通夜や葬儀を開くことは難しいようだ。 大手葬儀会社の関係者は「亡くなられた方だけでなく、遺族にも濃厚接触者が含まれている可能性が高い。 感染を拡大させないためにも、従業員を守るためにも通常の葬儀をすることはお断りしている」と明かす。 また、新型コロナの流行は、新型コロナウイルス感染症の患者以外の葬儀にも影響を与えている。 政府や自治体によるイベントの自粛要請が続く中、簡略化や小規模化が進んでいるのだ。 「一昔前だと100人が列席とかは当たり前だったが、近年では30人前後が普通になった。 それが今回のコロナでさらに加速している」。 葬儀会社の担当者らはそう口をそろえる。 公益社の担当者は「高齢の方や遠方の関係者の参列を見合わせるケースが多い。 参列者は1割程度減少している」と指摘。 平安レイサービスでは「家族葬など小規模の式が増えている。 まずは火葬だけを行い、コロナの収束後に集まろうとしているケースもある」と話す。 葬儀仲介や僧侶手配事業を手掛けるよりそう(東京・品川)でも、通夜や告別式をしない火葬のみの「火葬式プラン」が4月は前年より1割増えている。 また、通夜では大皿で食事などが振る舞われることも多かったが取りやめも増えているほか、僧侶などが感染拡大のリスクを避けるために大規模な葬儀を敬遠する場合もあるという。 こうした葬儀の簡素化は、新型コロナウイルスの感染拡大が収束しても、そのまま定着するとみる向きもある。 「葬儀を考えるNPO東京」の高橋進代表理事は「都市部を中心に、通夜を行わない一日葬や、家族葬がさらに浸透するのではないか」と分析。 「大規模な葬儀は費用面などでも家族への負担が大きい。 近所づきあいなどつながりが強固な地方部ではコロナ収束後に再開される可能性は大きいが、都市部では『身内だけで』という考えがさらに広まりそうだ」と語る。 「葬儀の簡略化や少人数化で収益はどうしても下がる」とは大手葬儀会社関係者。 葬儀会社の中には自前で多数の施設を保有する企業も少なくなく、簡素化が進めば固定費の回収は難しくなる。 葬儀会社の苦難は、コロナ禍による一過性のものではなく、長引いていく可能性もありそうだ。

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新型コロナウイルスの感染拡大が危ぶまれる今、お葬式はどうなる?葬儀社の対策事例

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新型コロナウイルスが猛威をふるう中、葬儀社の動向にも注目が集まっています。 3月16日には鎌倉新書でも新型コロナウイルスに対して、葬儀社がどのような対応をしているか、また一般の方々がどのような対応を葬儀社に対して望んでいるか、を発表しました。 しかし、現在、状況はさらに深刻さを増し、感染拡大を受けて政府は 4月7日、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に、5月6日までの期間で緊急事態宣言を発令しました。 このような状況の中、葬儀の現場ではどのような対応が取られているのでしょうか? 今回は、首都圏並びに地方の葬儀社の皆さんに新型コロナウイルスへの対策について、お電話でお話を伺いました。 喪主も葬儀社のスタッフもマスクで葬儀 東京都江戸川区に本社を構える株式会社東京葬祭の取締役、尾上正幸さんは「新型コロナウイルスに対する消費者の不安は2月末の段階ですでに現れていた」と言います。 2月の末には、「万一、迷惑がかかると申し訳ないので、遠方の親せきをご葬儀に呼ばない」という喪主が。 そして3月に入ると会食を行わなかったり、人数を限定したお葬式を希望する遺族が増えたそうです。 そして現在、同社の葬儀は喪主も参列者も全員マスクを用意し、着用して列席。 施行担当者もマスクを着用して葬儀を執り行っています。 葬儀前の打ち合わせは対面で行っていますが、打ち合わせ中も担当者はマスクを必ず着用し、また各自に消毒用アルコールを常に携帯させ、打ち合わせの前に必ず手の消毒することを義務付けています。 会社としては、全社員にマスクとマスクの中に入れる不織布を配布しています。 「インフルエンザやノロウイルスが流行ることを見越して、マスクや消毒液はあらかじめストックできていましたので、葬儀のスタッフだけでなく、生花店や飲食業者など協力業者の方にも同様に配布を行っています。 一時不足も懸念されていましたが、地域の方々やお取引先様の情報に支えられながら、対策を続けています」(尾上さん)。 葬儀の前には式場のドアノブの消毒と換気を徹底 葬儀社としての対応については、まず葬儀会館の清掃があると言います。 「定期的な会館の清掃に加え、ご葬儀の会式前には必ずドアノブなど手を触れる場所を消毒し、さらに葬儀が始まる前に『換気のために』とアナウンスし、窓や扉をすべて開けさせていただき、空気の入れ替えを徹底しています 」 (尾上さん)。 また、医療関係者との連携して、もしも新型コロナウイルスに感染した方の葬儀を担当した場合、どのような対応をしなければならないかといったレクチャーを受け、それを基準に基本的なルールを策定しました。 そのルールや対応方法などを説明する動画も作成し、社内で共有しています。 写真はイメージです。 注目される大型の葬儀式場 また、使用される会館の傾向にも変化が訪れています。 近年、家族葬など小規模な葬儀が増える中、大型の会館はどちらかというと敬遠されてきました。 大きな会場に親族のみ数名の参列者というと寂しい印象を与えかねず、家族葬専用ホールというように小型の斎場が選ばれていました。 ところが、新型コロナウイルスの影響で大型の会館も見直されているようです。 少人数であってもあえて大型の葬儀式場を選んで、参列者同士の間隔を開けて椅子を用意し、広々とした空間を使って感染のリスクを軽減させる葬儀を希望する喪主も増えているようです。 密閉・密集・密接。 3つの密を回避するため葬儀式場のレイアウトにも工夫 こうした動きは東京葬祭に限ったことではありません。 「従来、大型の式場は家族葬など小規模な葬儀に対応するためカーテンなどで区切って利用していました。 しかし今では、広い空間で1メートル以上の間隔を空けたレイアウトを用意して、ご遺族に提案しています」というのは、東京近県の葬儀社に勤めるAさんです。 Aさんの葬儀社のある地域では、3月に入ったころはまだ遺族も「新型コロナウイルスを意識して小規模な葬儀を望む方もいれば、あまり意識をされない方もいらした」と言います。 換気などに注意を払うスタッフを見て「そこまで配慮するのね」と驚く方もいたそうです。 しかし、3月下旬になると、葬儀の規模を小さくしたいという希望はより多くなりました。 4月に予定されていた四十九日法要は家族だけで行うことにして、「親族は一周忌に集まりましょう」という遺族もいらっしゃるそうです。 Aさんはこうした遺族の要望の変化に先だち、新型コロナウイルス感染の不安を少しでも払拭できるよう、通常の葬儀の案内資料とは別に、新たな資料も用意しました。 3つの密を回避できるよう、葬儀式場のレイアウトなどに工夫を凝らすほか、さまざまな提案を準備しています。 感染リスクを減らすため、持ち帰りできる通夜振る舞いや時間差での参列を提案 例えば高齢の方がほかの参列者との接触を極力避けられるようにと、お通夜の前後で時間をずらした参列を勧めるなど、感染リスクを抑える提案をしています。 また、通夜振る舞いなどの料理は持ち帰ることができるように手配。 「焼香に来ていただいただけで十分気持ちは伝わります。 まずは感染しない、させないことを最優先」としています。 さらに今後は感染リスクをより減らすため、「焼香の列も間隔を空けるようにしたい」と語っています。 写真はイメージです。 感染リスクのある通夜や参列を抑える直葬・火葬式や一日葬が増加 「新型コロナウイルスにおける実態調査」/鎌倉新書/2020年4月/n-92 鎌倉新書が「いい葬儀」の提携葬儀社を対象に行ったアンケートでは、新型コロナウイルスによって増加した葬儀の形態に、直葬・火葬式や一日葬など、通夜や告別式での感染リスクを抑えるため、参列者数の少ない葬儀や時間が短い葬儀の依頼や相談が増えているという結果になりました。 また、家族葬も参列者数が10名以下というように、規模を縮小してお葬式を執り行うという依頼や相談も増加しています。 新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策は葬儀社により異なる 新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策として、感染拡大予防の取り組みは各社ともに行っていますが、感染の疑いのある故人の葬儀については、ます。 「新型コロナウイルスにおける実態調査」/鎌倉新書/2020年4月/n-92 現段階で、感染の疑いのある故人の葬儀も「対応している」という葬儀社は全体の34. (感染が疑われる故人については)防護服やフェイスガード、ゴーグルを着用して対応し、搬送車も都度専門業者によって消毒するというところもある一方で、防護服の準備が間に合っていない(ため対応しない)といった回答もあります。 葬儀の模様を撮影する遺族が増えている それでは、地方の葬儀社ではどのような対応を取っているのでしょうか? 秋田県大仙市にある花王堂大曲葬儀社の遠藤元也社長は、参列者に向けて式場の前に「マスクを着用して参列してください」という看板を用意しました。 そして入り口にはアルコール消毒を用意して、各自で消毒をしてから参列してもらうようにしているそうです。 さらに、式後には会場を封鎖して、空気を除菌する装置を用いて清浄化に努めています。 葬儀の傾向としては、「参列者数の減少はある」と言います。 遺族たちの中には「東京をはじめ首都圏で暮らす親族には、葬儀への参列を遠慮してもらうよう」連絡をしている方も多く、そうした影響は少なからず現れています。 同時に、葬儀に参列できない親族に送るため、葬儀の模様をスマホで撮影したり、動画を撮る遺族が増えているそうです。 さらに、遠藤社長は先日、地域の公営火葬場に対して、「万一、新型コロナウイルスに感染した方が亡くなった場合の火葬のルールを決める必要がある」と提案を行いました。 「現在、この地域では一日に6回火葬を行っており、一番最終の時間帯が14時から16時です。 ですので、もしも感染者の火葬を行う場合には、故人やご遺族のプライバシーを守るためにもすべての火葬が終わったのち、17時からとするなどの提案をさせていただきました」(遠藤さん) 今回の提案には、2011年の東日本大震災の教訓もあると言います。 「行政は、生きている人の対策は考えていますが、亡くなった方のことはどうしても後回しにされがち。 今の段階からルールを決めておかないと、もしもの時、現場もご遺族も混乱する恐れがあります」。 そうした混乱を避けるためにも、早い段階でルールの制定を求めたいというわけです。 写真はイメージです。 透明な納体袋での葬儀は現実的か? さて、先日、新型コロナウイルスに感染者が亡くなった際に、納体袋に入ったままでも遺族たちが顔を見てお別れができるようにと、透明な納体袋が提案され話題になりました。 しかし、納体袋での葬儀には、葬儀社の中でも賛否両論あります。 先述の尾上さんは「故人のお姿を見てお別れすることが必ずしも良いことではない場合もあるのでは?」と懸念しています。 「2次感染を防ぐため、通常のエンゼルケアや死化粧が行われていないご遺体と遺族が対面した時、どのようなお気持ちになるかわかりません。 いろいろできることは素晴らしいとは思いますが、それが必要か?と問われると、違うのではないかと思います」(尾上さん) このほか「棺に横たわる故人様の姿というと、どなたも安らかな表情でいらっしゃるというイメージがあるのでしょうが、現実はそうとは限りません」という意見もあります。 人工呼吸器を使用することで、遺体の口が開いている可能性もあります。 感染のリスクもある中、医療関係者もどこまで遺体の処置ができるかはわかりません。 万が一、苦悶の表情のままの故人の姿を見た時、遺族はその姿を忘れることはできないでしょう。 また、納体袋そのものも、かなりしっかりした作りになっているため、余分な部分を下側に折り込んだりといったことが、簡単にできるものではないようです。 棺に納めた際に、遺族と対面ができるようなきれいな見栄えを保つことは「熟練の葬儀担当者であっても難しい」といった指摘もあります。 葬儀の現場にいる方からは、「最期の姿が悲惨であれば、その方の人生もすべて否定的に受け取られてしまう可能性もないとは言えません。 故人の尊厳を守るためにも、透明な納体袋でのお別れを手放しで賛同することは危険ではないでしょうか」という意見もありました。 さらに、もうひとつ考えなければならないのは、どなたかが新型コロナウイルスで亡くなった場合、その遺族も感染している可能性があるということです。 納体袋に納めることで遺体からの感染のリスクが回避できたとしても、もしも遺族から感染が広がってしまったら本末転倒です。 「故人のために何かをして差し上げたいという気持ちはわかりますが、次の感染者を出さないことこそが、故人の願いなのではないでしょうか」 このような状況に対し、先述の遠藤社長は感染者の葬儀を対応する場合を想定して、防護服を数セット用意しました。 「社員のためだけでなく、ご遺族にも使っていただけるようにと用意しました。 もちろん使わないに越したことはありませんが……」。 もしもの時、遺族が「どうしても」と希望するのであれば、故人と対面できる機会は用意したいと語っています。 まとめ 今回は首都圏と地方、いくつかの葬儀社にお話を伺いました。 共通することは、まず、感染のリスクを抑えて葬儀を行うには何ができるかということについて、いずれの葬儀社も真剣に取り組んでいる様子です。 そして、今後、もしも感染者の葬儀を行うことになった場合、どうすれば遺族にとって一番望ましいお別れができるのかということについても、さまざまな場面を想定して検討を進めています。 もう一つ、今回の取材で印象的だったのが、心ならずも葬儀の規模を縮小した遺族から、新型コロナウイルスが収束したら「お別れ会」を開きたいという希望もいくつか寄せられているという点です。 例えば、今は葬儀を身内だけで小人数で行い、「5月に改めてお別れ会を開きたい」という具合です。 状況を鑑み、5月の開催が難しい場合はさらに延期することも視野に入れながら、「将来のお別れ会」という希望にも柔軟に対応できるよう、取り組んでいるようです。 こうした機会がきっかけに、新たな葬儀のかたちが生まれるかも知れません。

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