メトホルミン。 【NDMA検出】メトホルミン塩酸塩錠500mgMT「JG」が自主回収(クラスⅠ)へ|理由は!?

メトホルミンの効果・副作用・飲み方について解説

メトホルミン

次に示す患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい。 ](「2. 重要な基本的注意」、「4. 73m2未満)のある患者又は透析患者(腹膜透析を含む)[腎臓における本剤の排泄が減少し、本剤の血中濃度が上昇する。 ] 重度の肝機能障害のある患者[肝臓における乳酸の代謝能が低下する。 ] 心血管系、肺機能に高度の障害(ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等)のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態にある患者[嫌気的解糖の亢進により乳酸産生が増加する。 ] 脱水症の患者又は脱水状態が懸念される患者(下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者、経口摂取が困難な患者等) 過度のアルコール摂取者[肝臓における乳酸の代謝能が低下する。 また、脱水状態を来すことがある。 ](「3. 相互作用(1)併用禁忌」の項参照) 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須である。 ] 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。 また、乳酸アシドーシスを起こしやすい。 ] 栄養不良状態、飢餓状態、衰弱状態、脳下垂体機能不全又は副腎機能不全の患者[低血糖を起こすおそれがある。 ] 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「6. 73m2未満)では、メトホルミンの血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスの発現リスクが高くなる可能性があるため、以下の点に注意すること。 73m2未満の患者では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。 (「2. 重要な基本的注意」、「4. 副作用(1)重大な副作用」、「薬物動態」の項参照) 投与は、少量より開始すること。 投与中は、より頻回に腎機能(eGFR等)を確認するなど慎重に経過を観察し、投与の適否及び投与量の調節を検討すること。 効果不十分な場合は、メトホルミン塩酸塩として1日最高投与量を750mgまで増量することができるが、効果を観察しながら徐々に増量すること。 また、投与にあたっては、1日量を1日2〜3回に分割投与すること。 使用上の注意 不規則な食事摂取、食事摂取量の不足[低血糖を起こすおそれがある。 ] 激しい筋肉運動[低血糖を起こすおそれがある。 ] 感染症[乳酸アシドーシスを起こすおそれがある。 ] 「3. 相互作用(2)併用注意1)」に示す薬剤との併用[乳酸アシドーシスを起こすおそれがある。 ] 他の糖尿病用薬を投与中の患者(「3. 相互作用(2)併用注意」、「4. 副作用(1)重大な副作用」の項参照) 軽度〜中等度の腎機能障害[乳酸アシドーシスを起こすおそれがある。 ](「用法及び用量に関連する使用上の注意」、「2. 重要な基本的注意」の項参照) 軽度〜中等度の肝機能障害[乳酸アシドーシスを起こすおそれがある。 ](「2. 重要な基本的注意」の項参照) 高齢者(「5. 高齢者への投与」の項参照) 重要な基本的注意 まれに重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがある。 リスク因子としては、腎機能障害、肝機能障害、低酸素血症を伴いやすい状態、脱水(利尿作用を有する薬剤の併用を含む)、過度のアルコール摂取、感染症、高齢者等が知られている。 特に、脱水、過度のアルコール摂取等により患者の状態が急変することもあるので、以下の点に注意すること。 (「4. 副作用(1)重大な副作用」の項参照) 本剤の投与開始前及びその後も投与中は定期的に、腎機能(eGFR等)及び肝機能を確認するとともに、患者の状態に十分注意して投与の適否及び投与量の調節を検討すること。 なお、高齢者等、特に慎重な経過観察が必要な場合には、より頻回に確認すること。 (「禁忌」、「用法・用量に関連する使用上の注意」、「5. 高齢者への投与」の項参照) 脱水症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 利尿作用を有する薬剤(利尿剤、SGLT2阻害剤等)との併用時には、特に脱水に注意すること。 (「3. 相互作用(2)併用注意」の項参照) 本剤の投与開始時及びその後も投与中は適切に、以下の内容を患者及びその家族に十分指導すること。 過度のアルコール摂取を避けること。 (「禁忌」、「3. 相互作用(1)併用禁忌」の項参照) 発熱、下痢、嘔吐、食事摂取不良等の体調不良(シックデイ)の時は脱水状態が懸念されるため、いったん服用を中止し、医師に相談すること。 (「禁忌」の項参照) 乳酸アシドーシスの症状(胃腸障害、倦怠感、筋肉痛、過呼吸等)があらわれた場合には、直ちに受診すること。 (「4. 副作用(1)重大な副作用」の項参照) ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては、本剤の併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、検査前は本剤の投与を一時的に中止すること(ただし、緊急に検査を行う必要がある場合を除く)。 ヨード造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しないこと。 なお、投与再開時には、患者の状態に注意すること。 (「3. 相互作用(2)併用注意」の項参照) 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。 また、低血糖症状に関する注意について、患者及びその家族に十分指導すること。 糖尿病の診断が確立した患者に対してのみ適用を考慮すること。 糖尿病以外にも耐糖能異常・尿糖陽性等、糖尿病類似の症状(腎性糖尿、甲状腺機能異常等)を有する疾患があることに留意すること。 適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。 投与する場合には、少量より開始し、血糖値、尿糖等を定期的に検査し、薬剤の効果を確かめ、本剤を3〜4ヵ月投与しても効果が不十分な場合には、速やかに他の治療法への切り替えを行うこと。 投与の継続中に、投与の必要がなくなる場合や、減量する必要がある場合があり、また患者の不養生、感染症の合併等により効果がなくなったり、不十分となる場合があるので、食事摂取量、体重の推移、血糖値、感染症の有無等に留意のうえ、常に投与継続の可否、投与量、薬剤の選択等に注意すること。 相互作用 ヨード造影剤 併用により乳酸アシドーシスを起こすことがある。 ヨード造影剤を用いて検査を行う場合には、本剤の投与を一時的に中止すること。 (「2. 重要な基本的注意」の項参照) 腎機能が低下し、本剤の排泄が低下することが考えられている。 腎毒性の強い抗生物質 ゲンタマイシン等 併用により乳酸アシドーシスを起こすことがある。 併用する場合は本剤の投与を一時的に減量・中止する等適切な処置を行うこと。 腎機能が低下し、本剤の排泄が低下することが考えられている。 利尿作用を有する薬剤 利尿剤 SGLT2阻害剤等 脱水により乳酸アシドーシスを起こすことがある。 脱水症状があらわれた場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。 (「2. 重要な基本的注意」の項参照) 利尿作用を有する薬剤により、体液量が減少し脱水状態になることがある。 スルホニルウレア剤併用時に低血糖のリスクが増加するおそれがある。 患者の状態を十分観察しながら投与する。 併用による血糖降下作用の増強。 たん白同化ホルモン剤 併用により低血糖が起こることがある。 スルホニルウレア剤併用時に低血糖のリスクが増加するおそれがある。 患者の状態を十分観察しながら投与する。 機序不明 サリチル酸剤 アスピリン等 併用により低血糖が起こることがある。 スルホニルウレア剤併用時に低血糖のリスクが増加するおそれがある。 患者の状態を十分観察しながら投与する。 サリチル酸剤の血糖降下作用が考えられている。 スルホニルウレア剤併用時に低血糖のリスクが増加するおそれがある。 患者の状態を十分観察しながら投与する。 モノアミン酸化酵素阻害剤 併用により低血糖が起こることがある。 スルホニルウレア剤併用時に低血糖のリスクが増加するおそれがある。 患者の状態を十分観察しながら投与する。 モノアミン酸化酵素阻害剤によるインスリン分泌促進、糖新生抑制が考えられている。 血糖降下作用を減弱する薬剤 アドレナリン 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 アドレナリンによる末梢での糖利用抑制、肝での糖新生促進、インスリン分泌抑制が考えられている。 副腎皮質ホルモン 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 副腎皮質ホルモンによる肝での糖新生促進等が考えられている。 甲状腺ホルモン 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 甲状腺ホルモンは糖代謝全般に作用し血糖値を変動させると考えられている。 卵胞ホルモン 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 卵胞ホルモンには耐糖能を変化させ、血糖を上昇させる作用が認められている。 利尿剤 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 利尿剤によるカリウム喪失によりインスリン分泌の低下が考えられている。 ピラジナミド 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 機序不明 イソニアジド 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 イソニアジドによる炭水化物代謝阻害が考えられている。 ニコチン酸 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 ニコチン酸による血糖上昇作用が考えられている。 フェノチアジン系薬剤 併用により血糖降下作用が減弱することがある。 患者の状態を十分観察しながら投与すること。 フェノチアジン系薬剤によるインスリン分泌抑制、副腎からのアドレナリン遊離が考えられている。 シメチジン ドルテグラビル ビクテグラビル バンデタニブ 本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強するおそれがある。 観察を十分に行い、必要に応じて本剤を減量するなど慎重に投与すること。 これらの薬剤の腎臓での有機カチオン輸送系阻害作用により、本剤の排泄が阻害されると考えられている。 副作用 頻度不明 消化器 注1) 下痢、食欲不振、腹痛、悪心、嘔吐、腹部膨満感、便秘、消化不良等、胃炎、胃腸障害、放屁増加 血液 貧血、白血球減少、血小板減少、白血球増加、好酸球増加 過敏症 注2) 発疹等、そう痒 肝臓 肝機能異常 腎臓 BUN上昇、クレアチニン上昇 代謝異常 CK(CPK)上昇、ケトーシス、乳酸上昇、血中カリウム上昇、血中尿酸増加 その他 全身倦怠感 注1)、頭痛、頭重、眠気、筋肉痛 注1)、めまい・ふらつき、味覚異常、浮腫、動悸、発汗、脱力感、空腹感、ビタミンB 12減少 注3) 注1)乳酸アシドーシスの初期症状であることもあるので注意すること。 注2)投与を中止すること。 注3)長期使用によりビタミンB 12の吸収不良があらわれることがある。 高齢者への投与 高齢者では、腎機能、肝機能等が低下していることが多く、また脱水症状を起こしやすい。 これらの状態では乳酸アシドーシスを起こしやすいので、以下の点に注意すること。 本剤の投与開始前、投与中は定期的に、特に慎重な経過観察が必要な場合にはより頻回に腎機能や肝機能を確認するなど十分に観察しながら慎重に投与すること。 [メトホルミンはほとんど代謝されず、未変化体のまま尿中に排泄される。 また、肝機能の低下により乳酸の代謝能が低下する。 ] 腎機能や脱水症状等患者の状態に十分注意して投与の中止や減量を検討すること。 特に75歳以上の高齢者では、乳酸アシドーシスが多く報告されており、予後も不良であることが多いため、本剤投与の適否をより慎重に判断すること。 血清クレアチニン値が正常範囲内であっても、年齢によっては実際の腎機能が低下していることがあるので、eGFR等も考慮して、慎重に患者の状態を観察すること。 妊婦、産婦、授乳婦等への投与 メトホルミン塩酸塩錠250mg「SN」と標準製剤を、クロスオーバー法によりそれぞれ1錠(メトホルミン塩酸塩として250mg)健康成人男子に絶食単回経口投与して血漿中メトホルミン塩酸塩濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log 0. 80 〜log 1. 25 の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された。 1 776. 5 3. 8 2. 8 標準製剤(錠剤、250mg) 4745. 7 718. 8 2. 8 2. ,n=28) 血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。 50 11. 19 11. 2 394. 8 軽度腎機能障害者(5例) 1. 52 13. 00 17. 2 383. 3 中等度腎機能障害者(4例) 4. 83 58. 58 16. 6 108. 薬効薬理.

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FDAがメトホルミンに含まれる発がん物質の量を調査|薬事日報ウェブサイト

メトホルミン

【2型糖尿病とメタボリック症候群はがんと老化を促進する】 食物からブドウ糖が体内に吸収されて血液中のブドウ糖濃度 血糖値 が上昇すると、膵臓のランゲルハンス島から分泌される インスリンの働きによって、ブドウ糖は筋肉組織などに取り込まれて血糖値が下がります。 このように、私たちの体はインスリンの働きによって血糖値が一定値以上に上昇しないように調節されていますが、インスリンの分泌量が低下したり働きが弱くなったために血糖値が高い状態が続くのが 糖尿病です。 膵臓のランゲルハンス島が破壊されてインスリンを分泌できないために発症する 1型糖尿病と、肥満や運動不足が原因となって発症する 2型糖尿病の2つのタイプがありますが、日本人の糖尿病のほとんどは2型糖尿病で、中高年の太った人に多いのが特徴です。 2型糖尿病は遺伝的素因を持つ人 血縁の人に糖尿病の人がいるなど に起こりやすいのですが、遺伝的素因があれば必ず起こるわけではなく、過食・運動不足・肥満・ストレスなどの要因が加わって発症します。 これら糖尿病の発症要因となる食生活や生活習慣は、がんの発生や再発のリスクを高める要因とも一致しています。 つまり、糖尿病の存在はがんの発生率や治療後の再発率を高めることが予想されます。 実際に多くの疫学研究で、 糖尿病が発がんリスクを高めることが確認されています。 日本で行なわれた大規模調査(約10万人を対象にした国立がんセンターの追跡調査)では、糖尿病と診断されたことのある人はない人に比べ、20〜30パーセントほどがんの発生率が高くなることが明らかになっています。 この調査では、糖尿病がある人のがんの発生率は糖尿病が無い人に比べて、男性は肝臓がんが2. 24倍、腎臓がん1. 92倍、膵臓がん1. 85倍、大腸がん1. 36倍、女性の場合は、卵巣がん2. 42倍、肝臓がん1. 94倍、胃がん1. 61倍という結果が得られています。 さらに、糖尿病があるとがんの進行が早く転移しやすいことも指摘されています。 高血糖や高インスリン血症ががん細胞の増殖を促進するからです。 また、糖尿病は高血圧や動脈硬化性心疾患や腎障害や神経障害などの原因になり、酸化ストレスを高め、老化を促進することになります。 インスリンが老化を早めて、寿命を短くする働きがあることも指摘されています。 メタボリック症候群(Metabolic syndrome:メタボリック・シンドローム)は内臓脂肪型肥満、高血糖、高脂血症、高血圧などの症状を呈する状態で、この病態の基礎には脂肪組織における炎症状態や、それに伴うインスリン抵抗性(インスリンの効き目が低下している状態)が関連しています。 メタボリック症候群は発がんの危険因子として知られていますが、その理由の一つは、インスリンの感受性が低下しているので高インスリン血症の状態にあるためと考えられています。 【高インスリン血症はがん細胞を増殖させる】 2型糖尿病を発症する前に、数年間高インスリン血症が見られると言われています。 インスリンの働きに影響する様々な生理活性物質が脂肪細胞から分泌されており、肥満によって体脂肪が増えるとインスリンの働きが低下します。 脂肪組織から分泌される アディポネクチンという蛋白質はインスリンの働きを高める作用がありますが、内蔵脂肪が増えると分泌量が減り、アディポネクチンの血中濃度が低下するとインスリン抵抗性 インスリンの作用低下 が高まります。 インスリンの働きが弱くなると、それを補うために体はインスリンの分泌量を増やして血中のインスリン濃度を高めて代償しようとします。 この段階ではインスリンの分泌増加によってまだ血糖があまり高くないので糖尿病とは診断されませんが、そのうちインスリンを分泌するランゲルハンス島から十分なインスリンが分泌されなくなると、高血糖状態が持続して糖尿病と診断されます。 米国のある疫学研究では、糖尿病と診断された人よりも、糖尿病の前段階 プレ糖尿病 の人の方が発がんリスクが高いという報告があります。 これは発がんリスクを高める原因として高インスリン血症の存在の重要性を示唆しています。 つまり、肥満や運動不足による糖尿病予備軍では、インスリン抵抗性による高血糖を抑えるためにインスリンが過剰に分泌され、発がんを促進すると考えられているのです。 インスリンは51個のアミノ酸からなるペプチドホルモンで、血糖値の上昇に応じて膵臓のランゲルハンス島のベータ細胞から分泌され、筋肉細胞へのブドウ糖の取り込みや、脂肪細胞での脂肪合成、肝臓におけるグリコーゲン合成を促進します。 インスリン自体にがん細胞の増殖を促進する作用があります。 さらに、インスリンはがん細胞の増殖を促進する インスリン様成長因子-1 IGF- 1 の活性を高めます。 高インスリン血症は、IGF-1の活性を制御しているIGF-1結合蛋白の産生量を減少させ、その結果、IGF-1の活性が高まります。 IGF-1はがん細胞の増殖や血管新生や転移を促進する作用がありま す。 IGF-1は70個のアミノ酸からなり、インスリンと似た構造をしています。 IGF-1受容体とインスリン受容体も類似しており、IGF-1とインスリンが交差反応することが知られています。 高インスリン血症では、インスリンがIGF-1受容体に結合して、IGF-1と同じように細胞の増殖を促進します。 さらにプレ糖尿病から糖尿病になって血糖が上がると、がん細胞はブドウ糖をエネルギー源として大量に取り込んでいるため、がん細胞の増殖に有利になります。 高血糖は活性酸素の産生を高め、血管内皮細胞や基底膜にダメージを与えて、血管透過性を高め、転移を起こしやくするという意見もあります。 大腸がんの患者さんは健常な人と比べて、血糖値や血中のインスリン濃度が高いという報告があります。 高インスリン血症は肝臓における性ホルモン結合グロブリンの産生を抑制するので、フリーのエストロゲンが血中に増えて、乳がん細胞の増殖を促進することも指摘されています。 このように様々な理由で、高血糖や高インスリン血症は、がんの発生や再発のリスクを高めることになるのです。 【インスリン感受性を高めるメトホルミン】 前述のアディポネクチンに抗がん作用があることが報告されています。 人の胃がん細胞を移植したマウスにアディポネクチンを注射すると、がんが著しく縮小したという報告があります。 また、アディポネクチンの低い人ほど大腸がん、前立腺がん、子宮体がん、乳がん、胃がんの発生率が高いという報告があります。 このアディポネクチンのがん予防効果は、インスリン感受性を高めて血中のインスリン濃度を低下させるためと推測されています。 つまり、インスリン感受性を高める(=インスリン抵抗性を低下させる)ことはがんの予防に効果が期待できることが指摘されています。 また、アディポネクチンはがん細胞の増殖を抑える AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化することも明らかになっています。 糖尿病の治療薬にはインスリンの他に、経口血糖降下薬があります。 経口血糖降下薬は、2型糖尿病において血糖値を正常化させることで糖尿病の合併症のリスクを軽減させる目的にて処方される薬物の総称で、膵臓のランゲルハンス島からのインスリンの分泌を促進する「 インスリン分泌促進薬(スルホニルウレア剤など)」、ブドウ糖の腸管からの吸収を阻害する「 ブドウ糖吸収阻害薬(アルファ・グルコシダーゼ阻害剤など)」、細胞のインスリン感受性を高める「 インスリン抵抗性改善薬(ビグアナイド剤など)」があります。 さて、インスリンががん細胞の増殖を促進し、老化を促進する作用があることから、インスリンの分泌を促進する薬剤は、がんと老化の予防の観点からは好ましくないと言えます。 実際に、インスリンの分泌を促進する薬ががんの発生率を高める可能性が指摘されています。 一方、インスリン抵抗性を改善して、血中のインスリン濃度を低下させる ビグアナイド剤は、老化とがんの予防に有効であることが多くの研究で明らかになっています。 ビグアナイド(biguanide)はグアニジン2分子が窒素原子1個を共有して連なった構造をもつ有機化合物です。 グアニジンはグアニン(核酸を構成する塩基の一つ)の分解や蛋白質の代謝で生成され、グアニジン誘導体の中には生理活性をもつものが多く見つかっています。 ビグアナイド剤は、元来は、血糖降下作用のある中東原産のマメ科のガレガ(Galega officinalis)から1920年代に見つかったグアニジン誘導体から開発された薬です。 ビグアナイド剤は、 AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を介した細胞内信号伝達系を刺激することによって糖代謝を改善します。 すなわち、筋・脂肪組織においてインスリン受容体の数を増加し、インスリン結合を増加させ、インスリン作用を増強してグルコース取り込みを促進します。 さらに肝臓に作用して糖新生を抑え、腸管でのブドウ糖吸収を抑制する作用があります。 インスリン抵抗性を改善することは老化やがんの予防に有効であることが明らかになっており、ビグアナイド剤の メトホルミン(Metformin)はがん予防や抗老化の薬としても注目されるようになっています。 インスリンの働きを良くしてインスリンの産生を抑える糖尿病治療薬の メトホルミン(Metformin)ががんの発生率を抑えることが多くの研究で明らかになっています。 台湾で実施された80万人を対象にした前向きコホート研究では、2型糖尿病があって血糖降下剤を服用していないグループでは、大腸がん・肝臓がん・胃がん・膵臓がんの発生率が約2倍くらいに高く、メトホルミンの服用によって非糖尿病グループのレベルに低下することが報告されています。 この論文では、1日500mgのメトホルミンががん(特に、胃がん、結腸直腸がん、肝臓がん、膵臓がん)の発生率を著明に低下させるという結論が記述されています。 (BMC Cancer 2011 Jan 18: 11 1 :20 [Epub ahead of print]) メトホルミンが、糖尿病患者の膵がんリスクを低下させることを示す結果が、米テキサス大学M. アンダーソンがんセンターの研究グループから報告されています。 糖尿病の患者でメトホルミンを服用していた場合、メトホルミンを服用しなかった人々と比べて、膵がんのリスクが 62 %低減することが示されています。 一方、インスリンまたはインスリン分泌促進薬を使用した糖尿病患者では、それらを使用しなかった患者と比較して、それぞれ、膵がんのリスクが 4. 99 倍と 2. 52 倍に増加しました。 (Gastroenterology 137:482-488, 2009) 膵臓がん以外にも、肺がんや大腸がんや乳がんなど多くのがんの予防や治療にメトホルミンが有効であることが多くの研究で明らかになっています。 メトホルミンには、乳がんの増殖や転移や悪性度に深くかかわる遺伝子タンパク(HER2:Human epidermal growth factor receptor type2)の働きを抑える作用があること、エストロゲンを産生するアロマターゼという酵素を阻害する作用も報告されています。 メトホルミンはインスリンの分泌を高めるのではなく、インスリン抵抗性を改善する(インスリンの働きを高めてインスリンの産生を低下させる)効果や、がん細胞の増殖を抑えるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化する作用があるので、糖尿病をもっていない人でも、がんの発生予防や再発予防やがん治療に役立つ可能性も指摘されています。 がん治療におけるメトホルミンの有効性を示す論文が以下に示すように最近多数報告されています。 Metformin and pathologic complete responses to neoadjuvant chemotherapy in diabetic patients with breast cancer. 糖尿病をもつ乳がん患者における術前化学療法に対する病理学的完全奏功とメトホルミン J Clinical Oncology, 27 20: 3297-3302, 2009 目的;経口血糖降下剤のメトホルミンの服用が、糖尿病患者におけるがんの発生と死亡を減らす効果があることが、疫学的研究で示唆されている。 培養がん細胞を使った実験や、移植腫瘍を用いた動物実験で、メトホルミンががん細胞の増殖を抑える効果が示されている。 しかし、人間の腫瘍におけるメトホルミンの抗がん作用を支持する臨床データはほとんど無い。 本研究は、糖尿病をもつ乳がん患者の術前化学療法におけるメトホルミンの効果を検討した。 患者と研究方法:米国のテキサス大学M. アンダーソンがんセンターで1990から2007年の間に早期の乳がんで術前化学療法を受けた患者2529人を対象にし、このうち糖尿病に罹患しておりメトホルミンを服用していた患者が68人、メトホルミンを服用していない糖尿病患者が87人、残りの2374名は非糖尿病であった。 術前化学療法後の腫瘍の切除標本を病理学的に検討し、病理学的な完全奏功の率を比較検討した。 メトホルミンを服用していたグループは、メトホルミンを服用していなかったグループに比較して、病理学的完全奏功率が高く、その差は統計的に有意であった。 結論: 糖尿病を有する乳がん患者では、メトホルミンを服用することによって術前化学療法の効果を高めることができる。 メトホルミンの抗がん作用に関してさらに検討する必要がある。 (解説) 乳がんでは、手術侵襲をさらに少なくするために、 従来はすぐに手術をおこなっていた早期の乳癌に対しても、積極的に 術前化学療法 ( neoadjuvant chemotherapy)や 術前ホルモン療法 neoadjuvant endocrine therapy が行われるようになっています。 これによって腫瘍をできうる限り小さくし、より小さな範囲の温存療法が可能になります。 術前化学療法の後に、手術で腫瘍部分を切除して、病理学的に検査すると、がんが全く消滅している場合があります。 これを 病理学的完全奏功(Pathologic Complete Response, pCR)と言います。 術前化学療法で病理学的完全奏功が得られた場合は、再発や転移が低く、予後が良いことが知られています。 この論文の研究は、米国のテキサス大学M. アンダーソンがんセンターからの報告です。 メトホルミン服用グループの患者数が68人と比較的少ないので、メトホルミンの有効性をさらに大規模な臨床試験で検証する必要はありますが、統計的に有意差が出ているので、メトホルミンが乳がんの抗がん剤治療の効き目を高める効果があると言えます。 つまり、インスリンががん細胞の増殖を促進する可能性を示しています。 メトホルミンはインスリンの分泌を低下させる効果の他に、AMP活性化プロテインキナーゼの活性を高めて、がん細胞の増殖を抑え、抗がん剤で死滅しやすくなることが報告されています。 糖尿病や肥満や運動不足は乳がんのリスク要因でもあり、糖尿病がある場合は再発率が高くなることが報告されています。 したがって、 糖尿病がある乳がん患者はメトホルミンを服用する方が良いと言えます。 今後は、非糖尿病患者にメオホルミンを投与することが有用かどうかを明らかにする必要があります。 Metformin selectively targets cancer stem cells, and acts together with chemotherapy to block tumor growth and prolong remission. メトホルミンはがん幹細胞に選択的に作用し、抗がん剤治療と相乗的に作用して、がん細胞の増殖を抑制し、寛解期間を延長する Cancer Res. 69 19 :7507-11, 2009 (論文の要旨) がんが再発する理由として、がん幹細胞の存在がある。 すなわち、がん組織の中でがん細胞を絶えず増やしているがん幹細胞と、がん組織を作ることができないがん細胞とが混在し、がん幹細胞は抗がん剤に抵抗性で、抗がん剤治療に生き残るために再発が起こるという考えがある。 したがって、がん幹細胞を死滅させる薬が望まれているが、そのような薬はまだ存在しない。 インスリン抵抗性を改善し糖尿病の治療に使われているメトホルミンは、がんの発生を抑制する効果があり、培養がん細胞や移植腫瘍を使った動物実験で、乳がんを含め多くのがん細胞の増殖を阻害する作用が報告されている。 ヌードマウスを使ったヒトの乳がん細胞を移植した実験では、トリプルネガティブ(ホルモン非依存性でHer2陰性)の乳がん細胞の増殖を抑制する効果が報告されている。 このような研究結果は、非糖尿病の場合でも、メトホルミンががんの治療に有効に働く可能性を示唆している。 この論文では、低用量のメトホルミンが、乳がんのがん幹細胞を選択的に死滅させる効果があることを報告している。 メトホルミンと通常の抗がん剤のドキソルビシンとを併用すると、非幹細胞のがん細胞とがん幹細胞の両方を死滅させることができることを培養がん細胞を使った実験で示している。 さらに、移植腫瘍を用いた動物実験で、抗がん剤単独の場合と比べて、抗がん剤とメトホルミンを併用すると、腫瘍を縮小させ再発を防ぐ効果が増強することが示された。 この動物実験では、ドキソルビシン単独の治療では20日で再発したが、ドキソルビシンと低用量メトホルミンの併用療法では腫瘍の再発が2ヶ月間以上抑えることができた。 これらの研究結果から、 乳がんに対して(そして、恐らく他のがんに対しても)、低用量のメトホルミンの投与は通常の抗がん剤治療の効果を高めることが示唆された。 The anti-diabetic drug metformin suppresses the metastasis-associated protein CD24 in MDA-MB-468 triple-negative breast cancer cells. (糖尿病治療薬メトホルミンはトリプルネガティブ乳がん細胞MDA-MB-468における転移関連蛋白CD24を抑制する)Oncol Rep. 25 1 :135-40. 2011 (要旨) CD24はムチン様の接着分子でがん細胞の転移能を促進し、乳がんにおいて予後不良のマーカーとして知られている。 治療に抵抗性の乳がんにおいて、遠隔転移したがん細胞の多くがCD24陽性であることが報告されている。 したがって、乳がん細胞において、CD24の発現を抑制することは、転移を抑制する治療法となる可能性がある。 この研究では、トリプルネガティブの乳がん細胞MDA-MB-468細胞に対するメトホルミンの増殖抑制効果は、CD24蛋白の発現抑制と密接に関連していることを示した。 様々な乳がん細胞の中で、トリプルネガティブの乳がん細胞が特にメトホルミンに対して感受性が高いことを認めた。 特に、CD44とCD24の両方を発現している乳がん細胞に対してメトホルミンの増殖抑制効果が強いことを認めた。 メトホルミンはCD24蛋白の発現を抑制した。 CD24の発現の多い乳がん細胞を持っている患者は無転移生存期間が短いことが明らかになった。 以上のことを総合すると、 予後が不良のトリプルネガティブの乳がんに対して、メトホルミンは転移を抑制して、生存期間をのばす効果が示唆された。 Metformin Treatment Exerts Antiinvasive and Antimetastatic Effects in Human Endometrial Carcinoma Cells. (メトホルミンはヒト子宮内膜がん細胞の浸潤と転移を抑制する)J Clin Endocrinol Metab. 2010 Dec 29. [Epub ahead of print] 【研究の背景】多嚢胞性卵巣症候群 Polycystic ovary syndrome は子宮内膜の増殖をお越しやすい最も一般的な内分泌機能異常である。 多嚢胞性卵巣症候群の治療に使用されるメトホルミンの、子宮内膜がん細胞に対する効果を明らかにする目的で研究した。 【目的と実験方法】培養したヒト子宮内膜がん細胞の浸潤能や転移能に対するメトホルミンの効果を検討した。 子宮内膜がんの浸潤と転移には炎症反応が密接に関連しているので、転写因子のNF-kBやマトリックスメタロプロテイナーゼなどとの関連についても検討した。 【結果】 子宮内膜がん細胞ECC-1細胞の培養条件に、メトホルミン(850mgを1日2回服用)を6ヶ月間服用した多嚢胞性卵巣症候群患者の血清を添加すると、メトホルミン非投与の患者血清を添加した場合に比べて、その浸潤能は著明に抑制された。 【結論】 メトホルミンは子宮内膜がんの補助療法として有用であることが示唆された。 Metformin promotes progesterone receptor expression via inhibition of mammalian target of rapamycin mTOR in endometrial cancer cells. (メトホルミンは子宮内膜がん細胞のmTORの阻害を介してプロゲステロン受容体の発現を促進する)J Steroid Biochem Mol Biol. 2010 Dec 17. [Epub ahead of print] (要旨) プロゲステロンは子宮内膜がんのホルモン治療として使用されているが、その奏功率は低い。 その理由はがん細胞におけるプロゲステロン受容体の発現率が低下しているからと考えられている。 インスリン様増殖因子は子宮内膜がんのリスクを高め、乳がん細胞においてプロゲステロン受容体の発現を抑制する作用がある。 最近の研究によると、経口避妊薬とメトホルミンを併用すると、プロゲステロン治療で抵抗性の子宮内膜の異型増殖を改善する効果が得られるが、そのメカニズムは不明である。 この研究では、培養ヒト子宮内膜がん細胞を用い、プロゲステロン受容体とインスリン様増殖因子に対するメトホルミンの作用と、メトホルミンがプロゲステロンの抗腫瘍効果を増強するかどうかについて検討した。 その結果、インスリン様増殖因子(IGF-IとIGF-II)はプロゲステロン受容体のmRNAと蛋白の発現を阻害し、メトホルミンはプロゲステロン受容体の発現を促進した。 さらに、IGF-IIはAKTとp70S6Kのリン酸化を促進し、メトホルミンはAMP活性化プロテインキナーゼのリン酸化を高め、p70S6Kのリン酸化を抑制した。 子宮内膜がん細胞に対するプロゲステロンの抗腫瘍効果をメトホルミンは相乗的に増強した。 1マイクロMのmedroxyprogesterone acetateと10マイクロMのメトホルミンで最大の相乗効果を認めた。 以上の結果より、子宮内膜がんでIGF-IIによって阻害されているプロゲステロン受容体の発現を、メトホルミンは促進する。 この作用は、メトホルミンがAMP活性化プロテインキナーゼを活性化し、がん細胞で活性化されているmTORシグナル伝達系を阻害することによって起こる。 (TGF-ベータ誘導性の上皮間葉移行に対するメトホルミンの抑制効果:がん幹細胞から老化関連線維化まで)Cell Cycle. 9 22 :4461-8. 2010. 我々の研究グループは、2型糖尿病やメタボリック症候群の治療薬のメトホルミンが、trastuzumab(商品名:ハーセプチン)に抵抗性を示す乳がん幹細胞の自己複製(self-renewal)と増殖を著明に抑制することを報告している。 このような機序で、メトホルミンは抗老化の治療薬として役立つ。 (解説) 上皮間葉移行〔Epithelial Mesenchymal Transition EMT 〕は上皮細胞が間葉系様細胞に形態変化する現象です。 がん細胞においては、EMTの獲得が運動性の亢進をもたらし、がん細胞の浸潤転移との関連が示唆されています。 (上皮間葉移行についてはを参照) さらに、EMTは慢性炎症などでの臓器の線維化や機能低下とも関連しています。 このEMTをメトホルミンは阻害する作用があり、これが、老化やがんの予防に役立つという仮説です。 以上の他にも、メトホルミンによるAMPプロテインキナーゼ活性化は、NF-kBの活性阻害や、抗がん剤耐性に関与するP-糖蛋白を阻害する作用、アロマターゼを阻害してエストロゲン産生を抑制する作用なども報告されています。 図;糖尿病治療薬のメトホルミンは、がん細胞の増殖や浸潤・転移を抑制し、抗がん剤治療の効果を高め、老化の抑制にも効果があることが報告されている。 以上のような様々な研究から、 抗老化(抗加齢;anti-aging)やがんの予防や治療において、メトホルミンの服用(1日500mg程度)は有用であると思われます。 メトホルミン(商品名:メルビン、メトグルコ、メデット、ネルビス、メトリオン、グリコラン、メトホルミン塩酸塩錠)は安価で安全性も高いので、糖尿病が無くても1日500mgの服用は、がんと老化の予防に有用です。 (ただし、他の薬との相互作用や副作用もあるので、使用する場合は医師など専門家とご相談下さい).

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「メトホルミン」が寿命を延ばす アンチエイジング効果を確かめる試験

メトホルミン

北里大学病院薬剤部長 厚田幸一郎氏に聞く メトホルミンは、2型糖尿病の薬物治療の第1選択薬として世界中で多く使用されている。 その一方で、頻度は高くないものの、不適切な患者への投与による乳酸アシドーシスの重篤な副作用も報告されている。 また、近年ではSGLT2阻害薬をはじめとする新しい糖尿病薬が登場し、それらの薬剤とメトホルミンとの併用例も数多く見られる。 こうした中、服薬指導時に、メトホルミンの適正使用ならびに他の薬剤併用時における継続した情報提供に基づく服薬指導の重要性がより高まっている。 そこで、メトホルミンの中でも唯一高用量(維持量750~1500mg/日、最高投与量2250mg/日)が使用できる「メトグルコ錠」の適正使用と、服薬指導のポイントを厚田幸一郎氏(北里大学病院薬剤部長)に聞いた。 わが国で1961年に発売されたが、70年代に同じビグアナイド薬(フェンホルミン)で乳酸アシドーシスの副作用が問題となり脚光を浴びることはなかった。 私が糖尿病教室に関わっていた30年ほど前も、ビグアナイド薬のブホルミンが使用されていたが、乳酸アシドーシスの問題でスルホニル尿素(SU)薬が主流であった。 その後、90年代に発表されたUKPDS(英国の大規模臨床試験)の試験結果や、インスリン抵抗性改善という新しいカテゴリーの薬理効果が再認識され、世界で広く繁用されるようになった。 わが国でも、2010年5月に上市されたメトグルコ錠は、メトホルミン製剤の中でも唯一高用量が使用できる薬剤として、2型糖尿病薬の基礎治療薬に位置づけられている。 通常、乳酸が蓄積すると肝臓で代謝されるが、肝臓での代謝能以上に乳酸が増加したり、肝機能が低下している場合は乳酸アシドーシスが発現する恐れがある。 さらに、メトホルミンは、そのほとんどが尿から排出されるため、腎機能が低下すれば血中濃度が高まる可能性があり注意を要する。 メトホルミンが体内に蓄積して作用が増強すれば、乳酸の蓄積が亢進するケースも考えられる。 メトホルミン投与による乳酸アシドーシスの発症頻度は、年間10万人当たり数人程度と報告されている(The New England Journal of Medicine 265 :338, 1998他)。 そのまま放置しておけば昏睡状態に陥り、死亡率は約50%と高いため、乳酸アシドーシスの発症防止では肝機能や腎機能障害に十分注意する必要がある。 服薬指導時には、肝機能低下による「疲れやすさ」、腎機能低下による「むくみ」を念頭に置き、そのような症状が発現していないかの確認や、「患者に肝機能や腎機能の数値を尋ねる」ことも重要である。 脱水・過度の飲酒・シックデイも乳酸アシドーシス促進 脱水や過度の飲酒、シックデイへの留意も忘れてはならない。 脱水は、急性腎不全を引き起こしたり、また、組織を低酸素状態にすることによって、乳酸アシドーシスを惹起しやすくなる。 過度の飲酒は、肝臓での乳酸代謝を低下させ、乳酸の血中濃度を増加させる。 発熱、嘔吐、下痢、食欲不振などを来すシックデイの中でも、脱水を伴うものは特に注意を要する。 また、メトグルコの副作用で最も頻度が高い下痢や吐き気などの消化器症状は、投与当初や増量時での一過性による場合が多い。 服薬指導では、その点をきちんと説明して、「消化器症状が出ても勝手に服薬を中止せず、薬剤師に相談する」ように指導するのが望ましい。 その一方で、消化器症状は、筋肉痛と共に乳酸アシドーシスの初期症状であることも留意したい。 乳酸アシドーシス発現防止で重要となる薬剤師の役割 ビグアナイド薬は、二つのグアニジン基を基本骨格とするが、側鎖の短いメトホルミンは水溶性が高く、ミトコンドリア膜に結合しにくいため、ビグアナイド薬の中でも乳酸アシドーシスが起こりにくい薬剤とされている( 図)。 これらの薬剤との併用では服薬指導時に、「異常な空腹感、動悸・震えなどの低血糖の症状が出れば、すぐに医師・薬剤師に連絡する」ようにきちんと説明しておく必要がある。 近年、メトグルコと新しい糖尿病薬との併用例も数多く見られる。 特にSGLT2阻害薬は、体内から尿を出して糖を排出させるため、体内循環液量減少に伴う脱水に注意が必要である。 今後、SGLT2阻害薬の投薬期間制限が解除されると、メトグルコとの併用例が増加することが予想され、水分補給の徹底といった「脱水による乳酸アシドーシス発現」に十分注意した対応が今後ますます求められる。 また、これまで予期し得なかった副作用等の懸念もあり、安全性情報に対し細心の注意を払う必要がある。 降圧薬・利尿薬など配合薬のチェックも 脱水に関しては、メトグルコと利尿薬の組み合わせにも注意したい。 特に、降圧薬/利尿薬の配合薬との併用は、薬剤師がきちんとチェックしなければならない。 糖尿病薬の併用や、糖尿病薬と脂質異常症治療薬などの配合薬との併用も、思わぬところからの相互作用発現があるので注意したい。 一部の薬剤においては、治験段階では見られなかった副作用が上市後に報告され、それぞれの薬剤でRecommendationが発表されている。 メトグルコの適正使用では、薬剤師がきちんとRecommendationに目を通し、常に他剤併用などの最新の情報提供にも注意を払うことの重要性を改めて認識してほしい。 それらの情報を整理する中で、副作用リスクを最小化するための服薬指導が不可欠である。 食事は、「患者が指示されたカロリーをバランス良く3食に分けて摂取しているか」が大きなポイントになる。 服薬指導時には、「間食やドカ食いをしていないか」「時間をかけて食事を摂っているか」「栄養素をきちんと取っているか」などの確認が求められる。 糖尿病では、基本的に「間食」しないことが望ましい。 果物は間食に適しているが、指示カロリーの範囲内で摂取すべきである。 果物を指示カロリー以上に摂取している患者は多い。 正しい食事の摂取は、簡単そうに見えて難しい。 患者が、検査値に非常に敏感なことも認識しておくべきだ。 HbA1c値は10%前後では、糖尿病薬を服用することによって1カ月で1%程度低下することが多い。 だが、熊本宣言2013(合併症を予防するために血糖管理目標値を7%未満)で示された7%近辺では0・1%下げるのも困難である。 「食事や運動療法を頑張っているのに、全然数値が改善しない」と悲観する患者に、「維持しているだけでもすばらしいですよ」という薬剤師の一言が、どれだけ患者を勇気づけるかも知っておきたい。 通常のやり取り以上に糖尿病患者の実生活を知るには、薬剤師が患者会に参画する手立てもある。 低血糖は、「フラフラして倒れる」と思いがちだが、私自身、患者が突然暴れ出す「異常行動」の低血糖を目の当たりにして驚いた経験がある。 糖尿病の薬物治療効果のさらなる向上には、薬剤師の積極的な患者のセルフケア行動支援のための知識や技術取得が不可欠である。 関連記事• (2015年2月16日).

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