『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)200頁• 何が衝撃的だったのか、うまく説明できませんが、あまりのリアルさ、濃厚さ、重厚さ、悲惨さ、エロさ、そして左幸子の迫真の演技、脇役の自然な演技、総てに圧倒された・・・という感じでした。
刑期を終えたとめを今は唐沢の情婦となった信子がむかえた。
こうして、寒村で慎ましく生きてきた純でいたいけなかつての少女は、東京で売春婦としての生活を送る中で、次第に強欲でしたたかな女へと変貌してゆく。
死に際の父親が、トメにむかって、お前の乳が飲みたいという。
「飢餓海峡」より。
監督・今村昌平について タイトルの由来は? 映画の冒頭は、乾いた大地を這いまわる、一匹の昆虫の姿で始まります。
9赤貧の百姓の娘として生まれた主人公があれほどまでに父親を愛し(しかし正常な関係とは言えない)、男に翻弄されながらも男に頼り、そして男を食い物にして生きようとする。 タクシーの運転手 -• 1957年の『幕末太陽傳』、ベルリン国際映画祭主演女優賞に輝いた本作、そして1965年の『飢餓海峡』で毎日映画コンクール女優主演賞受賞など、着実に実力派女優としての地位を確立していきました。
それと並行する形で、トメは売春防止法に引っかかり豚箱に放り込まれてしまう。
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ラジオで天皇の勅語が流れる8月15日、とめは誰もいない女子寮で肉体関係を持っていた係長の松波に無理矢理抱かれるが、戦争によって工場は閉鎖。
そんな彼女の肩を持つ唯一の存在である父の忠次とは、幼い頃から近親相姦めいた親子関係を持っている(とめの母えんは誰とでも肉体関係を結ぶ女であったので、実はとめの本当の父親が誰なのかは分からない)。
先日、この作品に関する他のご質問にも回答したのですが、私はこの映画が好きではありません。
金銭感覚はしっかりしてるので、やはり老人の子か。
進駐軍の妾の家の家政婦などをして食いつないでいるうちに、新興宗教にかぶれるようになり、その集会の場で出会った一人の女の世話になる。
もしこの映画がもう少し早く作られていたら、映画史上に残る大傑作としてもてはやされたかもしれない。 その剣幕に、信子の婚約者も押されっぱなしだ。
主人公の女性が昆虫の変態のように姿を変え、現代社会を生き抜いていく様を描いた。
昆虫は冒頭タイトルバックに登場するだけだ 本能のままに生きる登場人物達の行動を昆虫を観察するかのような徹底的にリアルな視線で捉えた映画だから「昆虫記」だというそうだ 本当だろうか? では、なぜ「にっぽん」が付けられているのか? なぜひらがなで記されているのか? 劇中、なぜ年月をそこまで正確に明示する必要があるのか? しかし、それが戦後になると、年月は明示されなくなるのだ 戦後だけニュース映像を挿入することによって、この物語が進行している間、日本には一体何が進行していたのか、それを説明しようとしているのだ そのことに注目すべきだ そして終盤には、タクシーが60年安保闘争のデモ隊によって通行が妨げられて、主人公のとめが苛立つシーンがあるのだ つまり本作は1961年の前作「豚と軍艦」と同じ視線と立場で撮られた映画であるということだ 日本の国民全体の運命を大きく変えてしまうような事態が進行しているのにも関わらず、この物語に登場するような人間達は自分達には何の関係も無いことだ、全く別の世界で生きているのだ 日本国民の為と信じて、社会主義活動に邁進して、60年安保闘争にはあのように激烈なまでに政治闘争に明け暮れたにもかかわらず、日本国民の大部分はこのような人間達ばかりだったのだ それはまるで人間社会とは無関係な、ただただ本能のままに生きる昆虫の社会のように別個に在るのだ それが「昆虫記」の意味だ だからタイトルは「にっぽん昆虫記」なのだ こんな国民が過半数を占める日本は日本では無い 認められないから、日本ではない「にっぽん」なのだ 自分達左翼運動をしている者だけを人間だと認めているのだ 日米安保を肯定するような、左翼運動に無関心、無関係に生きている日本国民は昆虫であるとみなしているのだ 政治に無関心な大衆を蔑視しているのだ 社会主義建設に無理解な大衆を見下しているのだ それが本作の正体だ このように左翼の人間に多く見られる、大衆を見下して自らを大衆を導くべき存在であると、生意気に思い上がった精神はこの当時から存在していたのだ いや、それは今村昌平監督やその世代が生み出したものだ それが拡大再生産されてきて60年も経過した21世紀においてもなお、その大衆を見下す精神構造はビクともしない神殿のようになっているのだ 信子はそんな大衆の中からでも、次の世代には必ずや、社会主義国家建設に向かう人間が現れる筈だという、そのような夢想だ これこそ空想的な社会主義建設だ 唾棄すべきは、このような大衆を見下す思い上がったエリート思想だ 21世紀の若い世代が、本作を観る値打ち、意味や意義は、この本作の正体とは何かを知ることだ そこにこそあるのだ 信子が身ごもった子供は、唐沢の子なのか、結婚相手の子なのか分からない とめの母えんと同じだ だが、自分達には違う意味が込められていたと感じられるのだ 日本に社会主義国家を建設するには、親はソ連でなくてもよいのだ、中国でも、北朝鮮でもいいのだと言っているように見えて仕方ないのだ そんなこと気にすんなと 21世紀の我々からすれば寒気のする話だ 今日は6月4日 1989年のこの日、天安門広場で大虐殺があった日 このような大衆を見下した思想が、民主制を求めて集まった数千人もの人民を、虫けらのように戦車で踏み潰した日なのだ 大衆を「昆虫」として見ているのだ 本作の公開から26年後に天安門事件は起こった そして今年はそれから32年が経った 中国は今も天安門事件自体が無かったかのように振る舞っている 「虫けら」を踏み潰した自覚を持っていないのだ 大衆を、本作の冒頭に映される昆虫になぞらえる思想なのだ これが本作の正体だ とめの母親が村の誰とでも寝る女で、父親は知恵おくれ。
ここらへんのクセのある役者の使い方が今村昌平はとにかく上手い。
美術 -• 小野川 -• トメは片肌を脱いで片方の乳房を取りだし、乳首を父親の口にあてがってやるのだ。 佐々木すみ江は、大学卒業後に劇団民藝の結成に参加し、1971年に退団するまで看板女優の一人として活動しました。
18波乱の人生をしぶとく、したたかに乗り越えていく強き女の生きざまを、独特のユーモアを交えたオールロケのリアリティで描き、日本映画史に残る屈指の傑作のひとつに位置付けられています。
唐沢の店を持たしてやるからとひきとめる言葉を胸にとめは故郷の土を踏んだ。
昆虫観察のような視点というテーマのため、主人公たちに感情移入できる内容ではなく、むしろ淫蕩な女たちがしたたかに生き抜き子孫を残す本能のみで生きていることが感じられる。
その後もテレビを中心に、NHK大河ドラマや朝ドラ、また『ふぞろいの林檎たち』など多数のヒットドラマに出演し、名バイプレーヤーとして活躍。
高羽製紙をクビとなったとめは七歳になった信子を忠次に預け単身上京した。 新興宗教の班長役で殿山泰司、売春宿の客役で加藤武、みどりの韓国人夫役で小沢昭一、他にも小池朝雄、露口茂らが脇役にキャスティングされています。
しかし結局は、時代からも仲間からも取り残され、一人ぽっちになってしまうのだ。
主人公が本人しか理解しない一種のアニミズム信仰に取り付かれているという設定も、今村らしい人間の原始的な本能への関心なのだと思います。
女工からコールガールの元締めとなった女の半生を描いたドラマ。
Sponsored Link 年齢は?出身は?本名は?妹は? 左さんは、1930年6月29日生まれ、 富山県下新川郡朝日町のご出身、 本名は、 額村幸子(ぬかむら さちこ)、 学歴は、 東京女子体育専門学校(現・東京女子体育大学)卒業、 ちなみに、左さんは、三男五女の長女として誕生しているのですが、 末の妹には、女優のさんがいらっしゃいます。 刑期を終えたとめを今は唐沢の情婦となった信子がむかえた。
12このラストシーンのとめの姿はまるで、映画の冒頭でジリジリと焼けついた砂の上をノロノロと這う昆虫の姿そのものである。 五社協定の各映画会社お抱えの看板スター女優ではなく、作品の質と役柄で出演を決めた異端派の女優としても知られています。
唐沢 -• スチール - キャスト [ ]• 企画 - 、• この映画を見られた方、どんな感想をお持ちでしょうか? また左幸子という女優さんについて思う事などを語って頂けませんか? ゆっくりとご回答をお待ちします。
健康な二人を前にして、やはりとめの心は店をきりもりする安楽な母娘の姿を描いていた長い間の人生の波にもまれたとめが、最後にもとめたささやかな夢だったのだ。
高羽製紙をクビとなったとめは七歳になった信子を忠次に預け単身上京した。
プライベートでは、1959年に映画監督の羽仁進と結婚して一女をもうけるも、実の妹に略奪され、ショックから自殺未遂を起こした過去もあります。 近頃は韓国のパンドラTVへ違法アップロードをしたとして逮捕された事例も出ていたりと、年々規制や監視は厳しくなってきています。
(左から)南田洋子さん、フランキー堺さん、左さん。
- の漫画作品。
英語タイトルは、そのままずばり 「The Insect Woman」。
晩年は、認知症になった南田 2009年に他界 の介護につとめ、2011年に77歳で死去しました。 健康な二人を前にして、やはりとめの心は店をきりもりする安楽な母娘の姿を描いていた長い間の人生の波にもまれたとめが、最後にもとめたささやかな夢だったのだ。 やがてその形式上の父親に、トメは近親相姦的な愛着を覚えるようになる。
18- (英語) 関連項目 [ ]• そんな女の生きざまを見て、気分は重くなるけど、感動もする。
一方、唐沢に信子を連れもどすよう頼まれたとめは、ふてくされながらも一人東京を離れて田舎の砂利道を歩いていました。
二十歳のとき、働いていた製糸工場をやめて、地主だった本田家の住み込み女中に入ります。
「人に歴史あり」とはよく言ったものだが、本作は、大正から昭和にかけての激動の時代を背景に、血と汗と欲望にまみれた一人の女の半生を、徹底的なリアリズムで描き上げる。