本 好き の 下剋上 pixiv。 TVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』本PV

書評『本好きの下剋上』

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フェルディナンドは有言実行。 出来ない事は言わないし、勝てない勝負はそもそも仕掛けない。 神々という例外もあるから基本的には。 だけど。 そんな訳で、『季節に一度か二度』とされる、下町の家族の元へ行ける二回目のチャンスは、一度目から季節が変わる事なくわたしの元へと訪れたのだ。 「ローゼマイン、急で悪いのだが、今回、私は同行を控えておきたい。 そして下町での衣服の扱いについて、エーファとトゥーリ、二人にもう一度よくよく相談をしてきて貰えないだろうか?できればあちらの君の部屋に置く方向で調整して欲しい」 「……えっ?フェルディナンド様っ?!」 とても真面目な顔で懇願してきたフェルディナンドに、わたしはひどく困惑した。 なぜならば、わたしたちはもう図書館の隠し部屋の中にいて、なんならわたしは平民のマインとして着替えも終わっているのだ。 「まさか、それほどにディーノとなる事が嫌なのですかっ!?」 「ディーノ?」 「わたくしが付けたフェルディナンド様の下町での偽名です!」 「そ、そうなのか。 ……ああ、いや、君と下町に行く事が問題なのではないのだ。 そこは勘違いをしないで欲しい。 私は君の家族を好ましく思っているのだから」 「わたくしだけの……ではありません!わたくしの婚約者であるフェルディナンド様にとっても家族にあたるのですよっ」 「ああ、そうだな、私の言い方が悪かった。 だからそのように感情を高ぶらせるものではない」 ハンカチを取り出して目元を拭ってくれたフェルディナンドが、お土産に持って行こうとしていたお菓子とお酒の入った籠と、なぜか私の貴族服を平民服がかかっていたハンガーに掛け替えて持ってくる。 「ローゼマイン。 君一人に大荷物を持たせる事になるのは心苦しいが、私は君が戻るまでここにいる。 だから、君は五の鐘が鳴ったらマインの部屋でエーファとトゥーリに着替えを手伝ってもらい、六の鐘には転移陣に乗って戻ってくるのだ。 よいな?」 「本当にフェルディナンド様はご一緒してくださらないのですか?」 「……ローゼマイン、こればかりはどうか聞き入れて欲しい。 急ぎ対策を練らねばなくなった事ができたのだ」 「フェルディナンド様……」 フェルディナンドがそこまで言う以上、本当に緊急的に思い至った事があったのだろう。 わたしは渋々頷くと、両手いっぱいに荷物を抱え、当初の喜びの半分のテンションで転移陣に乗り込んだのだ。 ……二回目にしてフェルディナンド様が一緒じゃないなんて、しょんぼりへにょんだよ。 「お帰りなさい、マイン」 「マイン、お帰りーっ、ってあれ?フェルディナンド様は一緒じゃないの?」 「……母さん、トゥーリぃぃっ」 優しい笑顔で出迎えてくれた下町の家族は、わたしの後ろにフェルディナンドがいない事を不思議がってくれて、ちゃんとわたしたちを受け入れてくれている家族にわたしは半泣きで抱きついて言い募った。 「急にやらないといけない事が入ったから、君だけで行ってきなさいって……うううっ」 「そうなの?やっぱりフェルディナンド様はお忙しいんだね」 「でも、転移陣のある隠し部屋には一緒に来てたんだよっ、今日はとっておきのお酒だって持ってきてたんだから一緒に来るつもりだったはずなのにぃーっ」 「うわっ。 フレーベルタークの五十年物っ!こんなの世の中に本当にあるもんなのか……さすがフェルディナンド様だな……」 籠の中を確認した母さんの隣でベンノさんが驚愕の声を上げている。 「フェルディナンド様の事だから、マインだけはどうにか行かせてやろうって気を遣った結果なんじゃないか?」 「ルッツ……」 みんなよっぽどの事があったんだろうと言いながらフェルディナンドを養護する。 でも、わたしには本当に分からないのだ。 なんの情報も入って来ないはずの隠し部屋で、フェルディナンドの予定をひっくり返すほどのおおごとだなんて一体なにが起こるというのだろう。 「……っと、そうそう、フェルディナンド様から伝言があってね」 「伝言?」 人からの頼まれ事はうっかり忘れてしまう前に済ませてしまうに限る。 父さんをはじめ、みんなが瞬いてわたしに注目した。 「母さんとトゥーリには五の鐘が鳴ったら転移陣のあるわたしの部屋で着替えを手伝って貰って、六の鐘には帰って来なさいって言われてるんだけど、今回は服の扱いについて二人にもう少し詳しく相談しておきなさい。 できたらこっちのマインの部屋に服を置いておいてもらえるように……だって」 そこでトゥーリがなにかに気付いたのだろう。 「あっ!?」と声を上げた。 「ねっ、ねぇ、マイン?」 「んー?」 「今回の着替えって、どうやったの……?」 「どうって、フェルディナンド様に後ろの紐を解いて貰って、あとはわたしがガバーッと!」 「「「「「「あー……」」」」」」 「えっ!?なになに!?なにか問題あった!?」 分からないわたしだけを置いて、父さん、母さん、トゥーリ、ルッツ、ベンノさん、マルクさんがそれぞれ天井を仰いだり、額に手を当てたりと明らかになにかの問題に気付いている。 「な、なんだよ、みんなだけで分かった顔して」 「あっ、カミルも分かんないんだね!?良かった、わたしだけじゃなかった!」 カミルにぎゅうを仕掛けながらみんなばっかり分かりあっててズルいと言うと、呆れ顔のみんなにじとぉと見返された。 あれ?わたしが悪いの?? 「ねぇ、マイン」 「なあに、トゥーリ」 「お着替えをフェルディナンド様に手伝ってもらったって事は、他に側仕えの人はいないって事なんだよね?」 「そうだね、ここに来る事は二人だけの秘密だもん。 でも着替えを手伝ってもらったって言っても、コルセットの紐を解いて貰っただけだよ?」 「……だけ……かぁ……」 トゥーリがすっごい微妙な顔でわたしを見てる。 母さんも困った子を見る目でわたしを見てる。 えっ?えっ??なんで!!? 「なぁ、マイン」 「はい?どうかしましたか?ベンノさん」 「言いづらいんだが、お前が着替えをしている間、フェルディナンド様はどうしてたんだ?」 「んー、耳を赤くして壁を向いていたような気がします」 「……分かってやれよ、そこで」 「なにをですか!?」 ベンノさんまで分かっている。 むしろこれは呆れている顔だ。 解せぬ。 「惚れた女にコルセット解かされて、目の前で着替えをおっぱじめられるなんざ、どんな拷問だよ!!フェルディナンド様が可哀想すぎて言葉にならんわ!!!」 「ふへえぇっ!!!!?」 言われて初めて、わたしって結構非常識だったのかしらと冷や汗が出た。 「惚れた女って……いや、紐だけですよ?背中だけですよ?そんな大袈裟な」 「男の欲情甘くみるな阿呆。 お前の中身がどれだけ残念だろうと、お前の背中だけで男にとっちゃ十分すぎる凶器なんだよ。 フェルディナンド様に襲わせたいのか!?理性のこよりを鉄製に鍛える試練を与えてるんだぞ!?実は試練の女神の化身なのかお前は!!!」 「わたしグリュックリテートになりたい訳じゃ……」 「…………さすがにフェルディナンド様が気の毒すぎる」 「父さんまでっ!!!?」 まさか父さんまでがそんな風に言っちゃうなんて! 慌てるわたしをよそに、母さんがトゥーリと相談を始めた。 「トゥーリ、出来そう?」 「母さんと二人がかりならなんとか形にはなると思うけど、完璧かどうかは怪しいなぁ……」 「おそらく、フェルディナンド様はその辺の根回しを考えているんだろう。 マインはトゥーリに頑張ってもらうとして、次からフェルディナンド様のお着替えはどうする?そっちもトゥーリに出来るのか?」 「わたしもさすがに男性服の現場に入った事がないから」 出来るとは明言できないとトゥーリが顔を曇らせた。 「ちょっ、待って下さいベンノさん!!フェルディナンド様のお着替えをトゥーリにさせるなんてダメですよ!?トゥーリは女の子なんですよ!!」 「その女の子のお着替えを男のフェルディナンド様にやらせた自分の行いを反省してろ、この阿呆!」 「あうっ!」 ベンノさんのつっこみが痛い。 ……久しぶりだから気持ちいいけど。 あれ?わたしなんか変態っぽくない? 「アレキサンドリアに来ているギルベルタ商会の人員はドレスと髪飾りに特化した人材ですからね……」 マルクさんも難しい顔で考え込む。 「男性服は仮縫いでも側仕えの人が間に入るって聞くしなぁ……」 「じゃあマルクやルッツがフォローに入るか?」 「私も一人では不安ですね。 書類仕事ならいくらでもお任せ頂けますが……」 「俺も出張で不在になる可能性を考えると、どうでしょうか」 「不味いな……俺やギュンター、カミルじゃまず無理だろうし」 「…………ユストクスを巻き込みます、というかもう巻き込んでると思います」 フェルディナンド様が。 と、しょんぼり顔でわたしが言うと、ホッとした空気がみんなを包んだ。 「じゃああとは、お前の部屋の設備だな。 衝立と衣装掛けが二か所分ってとこか」 「ベンノさん、仮縫いの時と同じ設備を整えるべきだと思いますから、椅子と姿見もあった方が良いです」 「払いはマイン貯金からだな。 早急に揃えておこう、ルッツ」 「明日の朝一番でグーテンベルクに発注します」 すると、わたしたちの後ろから「それは大変結構」と声がしてわたしたちはバっと振り返った。 「フェルディナンド様っ!……とユストクス!?」 平民服に着替えたフェルディナンド様が、やはり君達は仕事が早いなと微笑んで立っていた。 「常々鍛えられていますから」 ベンノさんがニッと笑う。 「フェルディナンド様、マインが色々とやらかしたようで、申し訳ありません」 父さんが謝ると、フェルディナンドも神妙な顔つきになる。 「いや、私の計画の見通しも甘かったのだ。 私達が貴族である以上、其方らには余計な苦労を背負わせる。 私こそ申し訳ない」 すると、フェルディナンド様は伴ってきたユストクスをみんなに改めて紹介した。 「これは私に忠誠を誓った一の側近だ。 情報にも精通している。 少々癖は強いが、信用してくれて良い」 「ユストクスです。 よろしくお願い致します」 ユストクスがみんなと挨拶をしている中、フェルディナンドの元へスルスルスルっと近付いていった。 平民服の動きやすさは本当に凄い。 パニエがないから距離感もいつもより近づけるよ!感動するね。 「フェルディナンド様、追いかけてきて下さったんですね」 「ユストクスが思いのほかスムーズに釣れたのでな」 そんな風に言ってはいるが、わたしを心配してくれたから駆けつけてくれたのだろうなんて事、わたしにはちゃんとお見通しなのだ。 ああ、もう、幸せすぎて最高だ、この気持ちをわたしは何と言えばいいのだろう。 頬が緩み、まるで意識しないままに祝福が溢れる時と同じように。 わたしの中から自然と一つの言葉が生まれた。 「うふふん、フェルディナンド様、大好きですよ」 「なっ!!?」 こうしてわたしは、いや、わたしたちは、口元を覆って耳どころか、顔面を赤くするという貴族にあるまじき姿を披露してしまうフェルディナンド様という、幻の珍獣にも等しいような光景を目撃してしまったのであった。 *** 一の側近と言われて内診でひゃっほーいしているのはユストクス。

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TVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』本PV

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周囲の変化は大きく、浦島太郎状態に不安がいっぱい。 けれど、休む間もなく、貴族になるための学校「貴族院」へ入学する。 そこは魔力の扱いや魔術具の調合を教えられ、領主候補生は領主として領地を治めるための魔術を学ぶ場。 個性的な教師や他領の子供達と一緒に寮生活をしながら、成長を目指す————はずが、院内に大型図書館があるとわかって大変。 「このライトノベルがすごい!2018」で、第1位としてインタビューを受けました。 よろしければ、そちらもご覧くださいませ。 読みやすい文体で、初めてのライトノベルにもおすすめの人気シリーズ! ある日、地震による事故で死んでしまった本好きの女子大生・麗乃が、異世界の幼女・マインとして目覚める。 本を読みたい… しかしこの世界には本が無かった! (あるけど高価すぎて手に入らない。 貧しい家の娘であるマインは、どうしても手に入れたい本のために決意! 「本がなければ、自分で作ればいい。 」 本を作るには紙作りから、紙を作るには道具作りから、素材集めから… 病弱・虚弱で無理をするとすぐに倒れてしまう体で、目標のために邁進するマインの姿が本作の魅力。 そして徐々に彼女の行動が周囲の人たちに影響を与え、スケール感を増しながら展開される物語には引き込まれることうけあいです!.

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『本好きの下剋上』感想

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私はカルステッド。 エーレンフェストの騎士団長だ。 この春、エーレンフェストは大変な災厄に見舞われた。 ジルヴェスターの姉君ゲオルギーネ様がとうとうエーレンフェストに侵攻して来たのだ。 幸い十分に迎撃準備をしていたため、勝利することができた。 しかし、南方の土地は少なくない被害を受け、ゲオルギーネ様を手に掛けたジルヴェスターは心に深い傷を負った。 ジルヴェスターの心痛を心配していたが、その後中央で次々と大事件が起こり、そのすべてに養女のローゼマインが関わっているものだから、ジルヴェスターは対応に追われた。 いや、今もそれは続いている。 お陰でゲオルギーネ様の事を思い出す暇も無いのだから、良かったのかもしれない。 昨年生まれた娘は可愛い盛りだろうし、第二夫人を迎えることも決まっている。 このまま前を向いて家庭や仕事で忙しくしていれば、傷は塞がるだろう。 そして我が家は、娘のローゼマインがアーレンスバッハの礎を奪ったため、大領地のアウブの実家になってしまった。 少し前の領主会議で大領地アレキサンドリアのアウブとして正式に承認され、一段落したところだ。 様々なことが立て続けに起こったため、エーレンフェストでは貴族達が大騒ぎだ。 夏にも拘わらず、冬の社交界に劣らず情報収集や社交が盛んなようだ。 ******* 騎士団での一日の業務が終わり、夜間待機組と引き継ぎが行われる頃、オルドナンツが飛んできた。 「カルステッド様、エルヴィーラです。 近いうちに家族揃っての夕食に致しませんか。 珍しい食材が手に入ったのです。 」 一緒にいた数人の騎士が「仲がよろしいですな」と笑みを浮かべる。 少々気恥しいが、不快ではない。 数年前までエルヴィーラとは不仲とまではいかないが、良好ともいえない仲だった。 家に帰るのが億劫だったあの頃を考えると、今の状態は得難くずっと続いて欲しいと思う。 「明日なら家でゆっくりできる。 ランプレヒトにも声を掛けておこう。 」 返信すると、 「父上、私は毎日こちらに戻っているので、声掛けは不要です。 」 とランプレヒトからオルドナンツが戻ってきた。 騎士達に再び笑われることになった。 翌日、家に戻るとすでにエルヴィーラとランプレヒト、アウレーリアが揃っていた。 珍しい食材とはアレキサンドリアから送られてきた料理のことだったようだ。 そういえば先日、境界門から私の自宅宛ての馬車が通ったと知らせを受けていた。 「ローゼマインから試食をして欲しいとお料理が届いたのです。 評判が良ければ社交に使うつもりなのでしょうね。 」 ローゼマインがアウブ・アレキサンドリアとなって以降、エルヴィーラは社交で大忙しのはずだが、疲れた様子はなく生き生きとしている。 身を案じていたエックハルト達の安全が確保され、絶賛していたフェルディナンドと自分の娘が婚約したのだ。 二度と結婚しないのではと思っていたエックハルトもアンゲリカともうすぐ星結びだ。 心配ごとが一気に解決し、不可能と思われた望みが叶ったのだ。 疲労など感じないのかもしれない。 エルヴィーラにはずっと苦労をかけてきた。 今のように笑顔でいてくれるなら、我が家に大層な肩書が付こうと少々負担が掛かろうと良いかと思う。 食事は新鮮な魚にポメと瑞々しいチーズの前菜、白身魚のフライに魚介の旨味が十分に沁み込んだスープだ。 どれも初めて食べる味だが実に美味だ。 パンは私の好みに合わせてくれたのか、食べ応えがある固さだった。 この食事はジルヴェスターに知られたら騒ぐだろうな。 「アレキサンドリアに行っても、ローゼマインの考案する料理は旨いな。 海の食材など知らなかっただろうに。 」 「ローゼマインはエーレンフェストにいた頃からお魚が大好きでしたよ。 お茶会でアウレーレアに強請っていた程です。 」 思い出したエルヴィーラが苦笑してアウレーリアを見る。 「ローゼマイン様がお魚を好きなお陰で、わたくしの持ってきた荷物が無駄にならずに済んだのです。 旧アーレンスバッハのアウブになったのは、海があることも大きいようですよ。 コルネリウスからの手紙に、ローゼマイン様が海を見て大はしゃぎして寝込んだ事や、毎日お魚を食べている事が書いてありました。 」 アウレーリアは故郷のアーレンスバッハが乗っ取られたことを気にしていないようだ。 安堵しているようにさえ見える。 アーレンスバッハの領主一族と良好な関係ではなかったのだろう。 「兄上からも手紙が来ています。 新居の準備で忙しいようですね。 アンゲリカも元気でやっているようです。 」 ランプレヒト夫妻に息子達から手紙が来ているようだ。 元気そうで何よりだ。 [newpage] 和やかな食事が終わると、別室に移動してお茶と酒が準備される。 「カルステッド様、こちらがアレキサンドリアからのお手紙です。 」 渡された手紙は私とエルヴィーラの両名宛で、まだ読まれていないようだった。 「わたくし宛のお手紙は他にあったのですよ。 リーゼレータがユストクスとの婚姻を考えているので、仲介をして欲しいそうです。 」 「リーゼレータがユストクスと?うーむ、エーレンフェスト出身者を選ぶのは分かるが・・。 親子程も歳が違う上に変わり者だぞ。 」 「ローゼマインの筆頭側仕えですから、夫に上級貴族を選びたいようですね。 ユストクスのことは楽しい人だと思っているようですよ。 それに二人共に利点が多いのです。 」 フェルディナンド様の筆頭側仕えであるユストクスには、縁談が何件も舞い込んでいるようだ。 だが主の危険や不利益に繋がり兼ねないため、迂闊に女性を近づける訳にいかない。 それはリーゼレータも同様で、外部に情報を流しかねない相手を選ぶつもりはないそうだ。 更に子供がエーレンフェストの実家を継ぐことになっている為、夫がエーレンフェスト出身者の方が望ましいという事情もあるようだ。 「リヒャルダに話して、ユストクスの意向を確認してみますね。 」 「そうだな。 リヒャルダもリーゼレータなら安心だろう。 」 「次代の為には、結婚は早い方が良いでしょうけど、家庭に入る時期が難しいですね。 エーレフェスト出身者は十数人しかいませんから。 」 エーレンフェストのおよそ3倍の旧アーレンスバッハ貴族を、僅かな人数で従えるのだ。 しかもアーレンスバッハはずっとエーレンフェストを見下して来た。 大逆を犯した領地という弱みはあるが、そうそう意識は変えられないだろう。 ローゼマイン達は決して楽観できない状況に身を置いているのだ。 「お義父様、お義母様、ローゼマイン様が推薦したい貴族がいれば知らせて欲しいそうです。 どのような基準で選べば良いでしょう。 」 アウレーリアが困ったように尋ねる。 「そなたの親族を推薦すれば良いのではないか?」 ランプレヒトが不思議そうに言った。 貴族にとって優先するのは家族、親族、同じ派閥で親しい順になる。 つまり利害が一致する順ということだ。 だが、アウレーリアは首を振った。 「わたくしの親族は旧アーレンスバッハ領主一族と近い関係にあります。 ローゼマイン様に推薦すべきとは思えません。 」 アウレーリアの父は故アウブ・アーレンスバッハの弟だ。 父方の親族をローゼマインに近づけるべきではないと言う。 母はフレーベルターク出身なので、親族がアレキサンドリアにいないのだ。 「ローゼマイン様は新しく自分の支持基盤を作っていくので、旧アーレンスバッハの家系や派閥は一切考慮する必要はないとのことです。 ですが誰でも良いという訳にはいきません。 ローゼマイン様はどのような人材を好まれますか?」 アウレーリアは母親になって面差しが柔らかくなったが、ランプレヒトよりずっと危機管理がしっかりしている。 下手な人間を推薦する訳にいかないのだ。 大領地の上級貴族出身だからというより、ランプレヒトが呑気なのだろう。 「うーむ、本好きなら間違いなく喜ぶだろうが・・。 」 「カルステッド様、ローゼマインのような本好きは困ります。 コルネリウス達に恨まれますよ。 」 エルヴィーラがにこやかに睨んでくる。 「だが、そなたもローゼマインの影響で本の執筆を始めたのだろう?コルネリウスが母子で恋物語が好きなところはそっくりだと言っていたぞ。 」 エルヴィーラは趣味と実益を兼ねて、物語好きな女性達と執筆活動を行っている。 優秀な文官だったことは知っているが、本の執筆を始めるとは思わなかった。 人気作家となる程文才に恵まれたエルヴィーラが母になったことといい、エックハルトではないが神々の采配ではないかと思う。 「否定はしませんけれど。 本が増えればあの子が喜びますし、良い趣味ですわ。 あの子がフィリーネとローデリヒを取り立てたのも、子供部屋でのお話集めが切っ掛けでしたね。 」 「ああ、下級貴族のフィリーネは嫉妬されて苦労していたようだが。 」 「お話集めや執筆など本に関わることを好み、上級貴族に限る必要はない、ですか。 」 アウレーリアが考え込んだ。 「上級貴族なら格下に配慮できることが大事ですね。 ローゼマインはフィリーネを側近にしたときに、悪意から守ると宣言したそうです。 側近達も倣って格下の同僚を悪意から守ったり助力したりしてましたね。 」 「最古参の側近のダームエルは下級貴族だが最も信頼しているな。 ローゼマインが護衛騎士を選ぶ基準はダームエルとうまくやれる相手と言った程だ。 アレキサンドリアにも呼び寄せるようだな。 」 「護衛騎士なら文官仕事が出来なくても構わないですよね?側仕えも。 」 ランプレヒトはローゼマインの護衛騎士は文官仕事もすることを知らないようだ。 「側近になるなら騎士でも文官仕事をする可能性がある。 エックハルトとダームエルは神殿で書類仕事を任されていた。 騎士団で取り立てるにしても人事や補給など書類仕事も多いし、戦術で頭を使うことが多い。 レオノーレのような頭脳型は必要だろう。 」 「神殿を忌避する態度を取らないことも重要ですね。 神殿に付いていくこともあるでしょうし、ローゼマインは良い気分はしないでしょうから。 」 「それから襲撃を受けたときの為に、側近は文官も側仕えも騎士と共に訓練を行っていた。 実際、ハルトムートは訓練を積んでいたお陰でアーレンスバッハへ同行できたのだ。 」 アウレーリアは頷きながら聞いていたが、何人か候補を思い浮かべたようで書き出してみると言った。 書き出した後はエルヴィーラと相談しながらローゼマインへの手紙を書くそうだ。 アウレーリアはエーレンフェストに嫁ぐ事が決まった時に、ローゼマインに紹介して欲しいと上級貴族の側仕え見習いに頼まれたことがあるそうだ。 貴族院の図書館のシュバルツとヴァイスに触りたかったらしい。 当時はローゼマインと良い関係が築けるかわからないので断ったが、ゲオルギーネ達と繋がりはない家なので、この学生の事も書いておくそうだ。 「リーゼレータと気が合いそうですね。 側近にしなくても社交で女性の味方を増やすのは大事ですから、良い関係を築けると良いです。 レオノーレは頑張ってくれるでしょうが、ローゼマインは社交に不慣れですから。 」 エルヴィーラは社交の重要性をよく知っているので、ローゼマインが不慣れなことが心配なようだ。 「エルヴィーラ、アレキサンドリアに行きたいのか?」 思わず心配になって聞いてみると、動揺した声が出てしまった。 「わたくしはカルステッド様の妻でエーレンフェスト貴族ですよ。 アレキサンドリアを訪問することはあっても必ず戻ってきます。 」 エルヴィーラはにっこり笑って答えてくれた。

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